M&Aにおける人事制度の統合
人事制度
日本でもM&Aは急激に拡大してきました。
企業が買収や合併を行えば、人事問題も必ずついて回ります。
まず、給与水準が違います。役職や等級、人事評価、その他さまざまな諸制度も異なります。 1つの会社にしておきながら、いつまでも異なる基準を並存させておくわけにもいきません。
例えば、給与水準であれば、高い方に合わせるのか、低い方に合わせるのか、 中間の水準を設定するのか、それとも違うままにしておくのか、といった選択肢があります。
ただし、そのいずれを採るにしても、問題が発生します。
高い方に合わせれば、社員は不満を持ちませんが、 人件費が上昇してしまいます。低い方や中間の水準にすれば、高い方の社員が不満を持ちます。 そうかといって、しばらく放っておけば、今度は低い方の社員が不満を抱くようになります。
幸運なことに、両社の給与水準がほぼ同じであったとしても、簡単ではありません。 通常、企業が合併すると、経営者は総務部門や経理部門といった管理部門は統合し、効率化しようと考えます。 すなわち、人員を減らす方向に動きます。 一般的にM&Aが、事業の相乗効果とコストの効率化を狙っている以上、当然のことです。
これまで私が見聞きしてきた経験からは、企業のM&Aが人材のモチベーションを上げる方向に作用することは、 ほとんどありません。
とはいえ、難しい局面は、人事担当者やコンサルタントの腕の見せ所でもあります。
M&Aにおける人事の役割は、
1.まずは、合併・買収後の社員のモチベーションを極力落とさない
2.新会社のあるべき人事方針・人事制度を構築する
3.将来的に、強い組織、人材のモチベーション・能力を高める
といった流れになるでしょう。
では、自社が吸収・合併、企業再編の当事者となったとして、人事制度の統合を進める場合、 どのようなステップを踏めばよいのでしょうか。
例えば、2つの会社が合併する際には、大きく分けて以下の3つの選択肢があります。
1:人事制度を当面統合しない
2:一方の会社の人事制度に統合する
3:新しい人事制度を設計し、両社の制度を移行させる
いずれの方法を選択するかは、M&A・企業再編のスタイル、同業種間なのか異業種間なのか、 双方の制度内容によりますが、現実には両社の力関係にも左右されます。片方の会社の影響力が強い場合には、そちら側の制度に合わせるケースが多いということです。
人事制度統合を進める場合、基本的な流れは以下のようになります。
1:推進体制を決定する
2:人事制度統合のスケジュールを立てる
3:両社の現状を整理・分析する
4:各種人事制度(等級、評価、賃金・・・)の方針を決定する
5:各種人事制度の具体的設計を行う
6:新制度への移行方法を決定する
7:社員に新制度を発表する
8:新制度へ移行する
この度、以上のような人事制度の流れを、小冊子「M&A、企業再編における人事制度統合の進め方」にまとめています。 以下のページから無料でダウンロードできますので、ご活用下さい。
M&A、企業再編における人事制度統合の進め方
執筆者
山口 俊一
(代表取締役社長)
人事コンサルタントとして20年以上の経験をもち、多くの企業の人事・賃金制度改革を支援。
人事戦略研究所を立ち上げ、一部上場企業から中堅・中小企業に至るまで、あらゆる業種・業態の人事制度改革コンサルティングを手掛ける。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
バックナンバー
- 評価者・考課者側のモチベーションを高める必要性
- リスキリングで人材流出の危険?
- 若手重視のベースアップ・賃上げを行う方法(ベースアップ・シミュレーションつき)
- 会計事務所、法律事務所など、士業の人事給与制度について
- 「年収の壁」と家族手当の子ども手当化
- 男女賃金格差は、開示のあった上場企業で約3割。その原因と今後の見通し
- 選択型・時短勤務制度とは ~多様な育児環境への対応~
- コロナ5類引き下げで、人事部・総務部が検討すべきテレワークなどの企業対応
- キーエンスに学ぶ平均年収の引き上げ方
- 先進企業に学ぶ、男女賃金格差の開示・情報公開方法
- 人事部門にエース級人材を配置するメリット
- 上場企業で、役員報酬の明確化が進む
- 70歳雇用義務化? 定年再雇用者にこそ、目標管理を。
- 正社員以外にも、家族手当、賞与、退職金が必要に?
- 「転職クチコミサイト」で、自社の評判をチェック