評価者と作る”人事評価制度”⑧

前回に引き続き、人事評価制度の策定プロセスに評価者を参画させる際の、プロジェクトの進め方についてご紹介していきます。
 
 Step1:自社が評価を行う目的を整理し、評価者と共有する
 Step2:自社の職種・階層(等級フレーム)を整理し、評価者と共有する
 Step3:評価者と共に、評価体系を整理し評価項目を検討する
 Step4:評価者と共に、各評価項目の基準を検討する
→Step5:評価者と共に、制度の運用・改善を継続的に行う
 
 
本稿では、最後のStep5について紹介していきたいと思います。Step5は、完成した評価表を実際に運用していく段階となります。制度を作って終わりにすることなく、引き続き評価者を参画させながら、評価者の育成と制度そのもののブラッシュアップを並行して継続していくことが肝要です。では、運用のなかで、どのように評価者を参画させていけば良いのでしょうか。
 
1.評価調整の場を活用する
人事評価のフローにおいて、評価者間の甘い・辛い等を是正するために、最後に評価点の調整を行うケースも多いのではないでしょうか。経営陣や人事部のみで完結させてしまうことが効率的ですが、”評価基準の認識のズレ”や”基準として言語化できないニュアンス”を評価者全員で擦り合わせていくために活用することも一つです。実際の評価点を題材に、”なぜ高得点もしくは低得点としたのか”、評価基準と評価点をつけた根拠を照らし合わせながら意見交換を行うことで、Step4に続いて、経営陣や人事部の想いを評価者に伝えながら、評価基準の理解・浸透を図っていくことをお勧めします。
 
2.評価者研修の場を活用する
評価者としての役割を実践していくためには、最低限知っておいてもらうべき知識やスキルがあります。ゆえに、評価者としての役割を担ってもらう社員に対して、会社として何かしらの学習の機会を設定することが重要です。また、評価者研修の場にて、”評価基準の認識のズレ”を評価者全員で擦り合わせていくことも一案です。評価調整の場を擦り合わせの場として活用しづらいという企業においては、特に定期的な評価者研修を実施していくことをお勧めします。
 
上記1,2では、評価調整や評価者研修の場を評価者の育成の観点で紹介しましたが、両者を通じて評価制度そのもののブラッシュアップを図っていくことも大切です。例えば、評価基準の擦り合わせを行っていくなかで、評価基準そのものに違和感があるだとか、社員に伝わりにくい表現となっているだとか、評価基準そのものを見直した方が適切なケースが出てくることも想定されます。その場合は、定期的に評価者を巻き込みながら、評価基準を改善していくことをお勧めします。
 
以上、Step5の「評価者と共に、制度の運用・改善を継続的に行う」について述べてきました。本稿にて、評価者と作る”人事評価制度”シリーズは最終となります。人事評価運用においてキーマンとなる評価者のレベル(制度の趣旨や評価基準の理解度 等)に課題認識を有している企業においては、人事評価制度策定のプロセスに工夫を施してみてはいかがでしょうか。

執筆者

辻 輝章 
(人事戦略研究所 コンサルタント)

自らの調査・分析を活用し、顧客の想いを実現に導くことをモットーに、国内大手証券会社にてリテール営業に従事する。様々な企業と関わる中で、社員が自ら活き活きと行動できる企業は力強いことを体感。"人(組織)"という経営資源の重要性に着目し、新経営サービスに入社する。
第一線での営業経験を活かして、顧客企業にどっぷりと入り込むことを得意とする。企業が抱える問題の本質を見極め、企業に根付くソリューションを追及することで、"人(組織)"の活性化に繋がる実践的な人事制度構築を支援している。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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