企業独自の福利厚生の考え方

社員のモチベーションアップや働きやすさの向上、離職防止や採用競争力の強化等、様々な目的のために福利厚生の充実を図っている、もしくは図ろうとしている企業も多いのではないでしょうか。

福利厚生とは社員に対する給与以外の非金銭的報酬額のことを指し、その選択肢は多岐にわたります。
 

法定福利厚生 健康保険や雇用保険等、法律で定められているもの
法定外福利厚生 各種補助や休暇制度等、企業が独自に定めているもの

 
本稿では、自由度の高い法定外福利厚生にフォーカスを当てて2つの検討の観点を紹介していきます。
 
1.社員の意見やニーズを調査してみる(下からの検討)

福利厚生の特徴として、仕組みを整備したものの思ったように活用されていないというケースが散見されます。導入後に形骸化させないためにも、社員に意見やニーズをヒアリングしてみることも一つです。但し、ヒアリングを実施した場合には、その結果のフィードバックもセットで実施することが肝要です。当たり前ではありますが、ヒアリングで上がってきた意見やニーズのすべてに応えられる訳ではありません。何も補足がなければ、意見した社員は無視されたと不満を感じる恐れがあります。良かれと思って検討しているのにも関わらず、不満が発生しては本末転倒です。最終的に、なぜこのような福利厚生のラインナップになったのか、その理由を明確にしておくことが求められます。
 
2.自社の経営理念や人事ポリシーと照らし合わせる(上からの検討)

では、その理由はどのように考えていけばいいのでしょうか。 福利厚生の候補を取捨選択していくにあたっては、自社の経営理念や人事ポリシーといったような上位概念を判断軸とし、検証していくことが効果的です。
 
【考え方の例】

人事ポリシーに「社員が活きいきと働き続けることができる」といったキーワードがある。

そのキーワードを深掘りした結果、
 ・社員が健康であること
 ・育児や介護といった家庭の事情も踏まえて働き続けられること
が重要であると考えた。

ゆえに、
 ・健康診断内容の拡充とインフルエンザ予防接種の補助
 ・法定外の対応として育児・介護休暇の拡充
を図り、レクリエーションや多目的にわたる福利厚生代行サービス等の利用は見送った。

 

加えて、福利厚生の特徴として、下記のようなことも挙げられます。
 
・有るものは既得権益化して当たり前に、無いものは外部との比較に晒されて不満の原因になりやすい
・恩恵を受けられない、もしくは受けづらい社員から不満の声が生じやすい 等
 
社員のヒアリング結果に対するフィードバックに留まらず、今後の運用のなかで生じる新たな不満に対応していくためにも、本観点と向き合っていただければと思います。
 
以上、企業独自の福利厚生の考え方について紹介いたしました。行き当たりばったりの福利厚生制度とならないようにご参考にいただければと思います。

執筆者

辻 輝章 
(人事戦略研究所 コンサルタント)

自らの調査・分析を活用し、顧客の想いを実現に導くことをモットーに、国内大手証券会社にてリテール営業に従事する。様々な企業と関わる中で、社員が自ら活き活きと行動できる企業は力強いことを体感。"人(組織)"という経営資源の重要性に着目し、新経営サービスに入社する。
第一線での営業経験を活かして、顧客企業にどっぷりと入り込むことを得意とする。企業が抱える問題の本質を見極め、企業に根付くソリューションを追及することで、"人(組織)"の活性化に繋がる実践的な人事制度構築を支援している。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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