評価者と作る”人事評価制度”⑤

前回に引き続き、人事評価制度の策定プロセスに評価者を参画させる際の、プロジェクトの進め方についてご紹介していきます。
 
 Step1:自社が評価を行う目的を整理し、評価者と共有する

 Step2:自社の職種・階層(等級フレーム)を整理し、評価者と共有する

→Step3:評価者と共に、評価体系を整理し評価項目を検討する

 Step4:評価者と共に、各評価項目の基準を検討する

 Step5:評価者と共に、制度の運用・改善を継続的に行う

 

本稿では、Step3について詳しく触れていきたいと思います。Step3では、評価者と共に、評価体系を整理し評価項目を検討していきます。
 
まず、評価体系の整理とは、どのような観点で自社の評価項目を構成していくか、すなわち”結果”や”プロセス”といった観点をどのようなバランスで評価していくのかを整理することを指します。また、評価項目の検討とは、整理した”結果”や”プロセス”のバランスの中で、どのようなものを評価項目として評価していくのかを検討することを指します。”結果”については、例えば売上や利益といった定量的な指標や目標達成度、”プロセス”については、例えばリーダーシップやコミュニケーション力といった定性的な項目を設定するイメージをお持ちいただければと思います。
これらは、経営陣や人事部を中心に設計していくことが基本となります。但し、人事評価制度が上手く機能しない理由としてこれまでにご紹介したソフト(評価者)面とハード(制度)面の問題に対する解決アプローチとして、評価者を巻き込みながら設計していくことも有効です。
 
1.ソフト面の問題解決アプローチ:設計に込めた想いを評価者と共有し、評価者のレベルアップを図る
経営陣や人事部が主導で設計を進めていくと、その設計の背景や意図は評価者には見えないものです。評価者が設計のプロセスを理解していないがゆえに、評価制度が意図した通りに機能しないというケースも多く発生しているのではないでしょうか。そのような事態を防ぐためにも、制度運用においてキーマンとなる評価者には、ぜひとも設計に込めた想いを理解しておいてもらいたいところです。設計の段階から評価者を巻き込み、その想いを共有することは、評価者の制度に対する理解を深めることに繋がります。特に、ソフト面の問題意識をお持ちの場合には、Step3にて設計に込めた想いを評価者と共有することをお勧めいたします。
 
2.ハード面の問題解決アプローチ:評価者の意見を聞いて、設計の精度を上げる
経営陣や人事部が主導で設計を進めた場合に、評価体系や評価項目の設計が現場の実態に則していないという問題がよく発生します。設計において、自社の成長ステージや戦略といった上位の方針・考え方が重要となることはもちろんですが、現場の実態とあまりに乖離していると、制度として使いづらいものになることが想定されます。そのような事態を防ぐためにも、現場の実態を最も理解している評価者の意見を参考にすることも一案です。但し、評価者から意見をもらう場合には、意見をもらいっぱなしにすることがないようにすることが大切です。意見を採用する場合も、しない場合も、なぜそう判断したのかをしっかりと評価者にフィードバックしていただければと思います。このフィードバックを疎かにしてしまうと、上記1でもお伝えした通り、設計に込めた想いが評価者に正確に伝わりませんのでご注意ください。

執筆者

辻 輝章 
(人事戦略研究所 コンサルタント)

自らの調査・分析を活用し、顧客の想いを実現に導くことをモットーに、国内大手証券会社にてリテール営業に従事する。様々な企業と関わる中で、社員が自ら活き活きと行動できる企業は力強いことを体感。"人(組織)"という経営資源の重要性に着目し、新経営サービスに入社する。
第一線での営業経験を活かして、顧客企業にどっぷりと入り込むことを得意とする。企業が抱える問題の本質を見極め、企業に根付くソリューションを追及することで、"人(組織)"の活性化に繋がる実践的な人事制度構築を支援している。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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