評価調整会議の進め方

評価調整会議とは、評価者が一堂に会して被評価者の人事評価結果を相互に確認し、意見交換をしながら必要に応じて評価の調整を行う会議のことを言います。評価者による評価点のバラつきを調整することを目的に、人事評価を客観化するための工夫の一つとして実施している企業も多いのではないでしょうか。本稿では、評価調整会議についてQ&A形式で触れていきたいと思います。

 

1:事前準備

 

 <目次>
 Q1:参加する評価者は何人程度が適切でしょうか?
 Q2:課長(一次評価者)自身の評価調整はどのように行うべきでしょうか?
 Q3:評価調整会議の実施時間はどの程度が適切でしょうか?
 Q4:事前準備しておくべき資料はあるでしょう?
 

 

 

Q1:参加する評価者は何人程度が適切でしょうか?

 

A1:最大で10名程度までを目安とすることをお勧めします。筆者もこれまでに多くの評価調整会議の場に同席してきましたが、人数が多過ぎると発言機会も少なくなり、どうしても集中力を欠いてしまう評価者が出てきてしまいます。社員の人事評価結果を網羅的にカバーできるように、社員規模に応じて例えば下記のように評価調整会議の場を設定してみることも一案です。

 

<社員規模50名程度の例> ※課長が一次評価者、部長が二次評価者のイメージ

  〇月〇日
時間 13時~16時
評価調整の対象者 一般社員層
参加者 全部長・全課長(8名)

 

<社員規模200名程度の例> ※課長が一次評価者、部長が二次評価者のイメージ

  〇月〇日

※各部で実施

〇月△日

※各部での調整後に部門横断的に実施

時間 13時~16時 13時~15時
評価調整の対象者 一般社員層 一般社員層
参加者 各部の部長・課長(4名) 全部長(6名)

 

一方で、評価調整会議をあえて10名以上(全部長・全課長)で実施したケースもあります。そのときは、参加者に対して“他の評価者の話しを聞くこと”を目的の一つとしてほしいことを伝えました。他の評価者はどのようなときに高い評価点をつけているのか?これら判断基準の足並みを揃えていくことは、評価者による評価点のバラつきを抑えていく上で非常に重要な取り組みとなります。参加人数に関わらず、是非評価者の皆さんに意識していただければと思います。

 

Q2:課長(一次評価者)自身の評価調整はどのように行うべきでしょうか?

 

A2:一般社員層の評価調整とは切り離して(課長本人がいない場所で)評価調整を実施することをお勧めします。評価調整会議の目的は評価者による評価点のバラつきを調整することにあります。それであれば、課長の評価者となる部長層で調整会議を実施すれば目的は達成されます。人事評価結果はセンシティブな情報となるため、必要以上のメンバーに共有されないよう配慮することが肝要です。

 

<課長層を評価調整の対象とする場合の実施例>

  第一部 第二部

※第一部終了後、課長層は退席

時間 13時~15時 15時~16時
評価調整の対象者 一般社員層 課長層
参加者 部長層・課長層 部長層

 

Q3:評価調整会議の実施時間はどの程度が適切でしょうか?

 

A3:評価調整会議にどの程度慣れているか、或いは評価調整会議でどこまで踏み込むのか、企業の状況や考え方によって様々です。例えば、特筆すべき評価項目(特に点数が高いor低い項目 等)や被評価者(特に合計点数が高いor低い被評価者 等)、評語にフォーカスを当てて意見交換を進めていくのであれば1時間程度で実施するケースもあります。一方で、評価調整会議に慣れていない企業において、評価者間の評価基準の摺り合わせにより重きを置いて一つずつの評価項目にフォーカスを当てて意見交換を進めていくのであれば、丸一日をかけて実施するケースもあります。自社の状況や考え方に応じてご検討いただければと思います。

 

Q4:事前準備しておくべき資料はあるでしょうか?

 

A4:被評価者の人事評価結果の一覧表を作成しておくことをお勧めします。評価調整会議の場では、評価者による評価点のバラつきを見ていくことになります。各人の評価表を一枚一枚比較していくことは非常に手間がかかる上に、視覚的にも比較が難しくなります。例えば、下記のようなイメージで人事評価結果を整理してみてはいかがでしょうか。

 

<人事評価結果の一覧表イメージ>

人事評価結果の一覧表イメージ

 

加えて、特筆すべき箇所(例えば、点数が高いor低い項目 等)にマークをつけておいたり、参考となりそうなデータ(例えば、等級滞留年数、本点数の場合に想定される評語、前回の評語 等)を記載しておいたりすることも一案です。自社の状況に応じて作成いただければと思います。

 

 

2:当日の進め方

 

 <目次>
 Q1:当日の流れはどのようなパターンが想定されますか?
 Q2:評価調整ではどのような観点で意見交換すればいいですか?
 

 
 
Q1:当日の流れはどのようなパターンが想定されますか?

 

A1:例えば、下記のようなアジェンダのもと進行していくことも一案です。

 

<評価調整会議アジェンダ例>

時間目安 内容
13時00分

13時15分

1.導入説明

■本日の目的やゴール・進め方の確認

■事前準備資料の説明

13時15分

14時15分

2.評価調整

■各評価者からの評価結果の補足説明

■他の評価者からの質問

■適宜、評価内容の修正 等

※下位等級の被評価者から実施

※以降、最上位等級の被評価者まで繰り返し

14時15分

14時30分

3.最終内容の確認

 

まず、導入説明については、評価調整会議に不慣れな場合は丁寧に時間を設けることをお勧めします。会議の目的やゴール・進め方を参加者全員で共有し、効果的・効率的な会議の進行を目指しましょう。

 

次に、評価調整については、評価者による評価のバラつきを調整していくことが目的となります。部門横断的に、例えば等級ごとに区切って、同じ仕事レベルと想定される被評価者間で意見交換を進めていくことが肝要です。

 

最後に、最終内容の確認については、参加者間で認識の違いがないように決定した内容を確認していきます。特に、評価内容の修正が生じた場合には丁寧に確認していきましょう。併せて、評価内容の修正が生じた場合には関係者への共有を徹底しておくことも肝要です。参加者の設定によっては、例えば、2次評価者以上が評価調整会議に参加するといったケースも想定されます。1次評価者に十分な説明がなされなければ、制度に対する不満や不信感に繋がる恐れもあるため、会議終了後のアクションについても丁寧に確認しておくことをお勧めします。

 

Q2:評価調整ではどのような観点で意見交換すればいいですか?

 

A2:評価調整会議でどこまで踏み込むのかにもよりますが、下記3つの観点を参考に意見交換していただければと思います。

 

<意見交換における3つの観点>

観点 ①    ミクロの観点 ②    マクロの観点
定義 一つずつの点数に違和感がないか?の観点 合計点数や評語の位置づけや序列に違和感がないか?の観点
意見交換の着眼点 各評価項目の点数に着目して、

■特に、評価点が高いor低い項目について意見交換する

■1次・2次評価者間で点数に乖離がある項目について意見交換する

■同等級・階層の被評価者と比較して、点数に違和感がある項目について意見交換する 等

合計点数や評語に着目して、

■特に、合計点数や評語が高いor低い被評価者について意見交換する

■1次・2次評価者間で合計点数や評語に乖離がある被評価者について意見交換する

■同等級・階層の被評価者と比較して、合計点数や評語に違和感がある被評価者について意見交換する 等

 

観点 ③    時間軸の観点
定義 過去の点数と比較して違和感がないか?の観点
意見交換の

着眼点

各評価項目の点数、もしくは合計点数や評語に着目して、

■変化がある内容について意見交換する 等

 

①ミクロの観点と②マクロの観点については、各企業の考え方に応じて濃淡をつけていくことが肝要です。例えば、

 

  •  ■評価者間の評価基準の摺り合わせにより重きを置きたい
  •  ■被評価者の成長課題の設定をより丁寧に行いたい 等

 

といった考え方であれば①ミクロの観点を重視し、

 

  •  ■評価項目ごとの点数は評価者のやりやすいように任せたい
  •  ■処遇に反映する合計点数や評語を中心に調整したい 等

 

といった考え方であれば②マクロの視点を重視していただければと思います。

 

加えて、③時間軸の観点をもつことも一つです。特に、異動があった被評価者や、評価者が変更となった被評価者について意見交換する際には重要な観点となります。
 
以上、本稿では評価調整会議の進め方についてQ&A形式で触れてきました。各社の評価調整会議に対する考え方を踏まえて、会議進行のご参考にいただけますと幸いです。

 

 

執筆者

辻 輝章 
(人事戦略研究所 コンサルタント)

自らの調査・分析を活用し、顧客の想いを実現に導くことをモットーに、国内大手証券会社にてリテール営業に従事する。様々な企業と関わる中で、社員が自ら活き活きと行動できる企業は力強いことを体感。"人(組織)"という経営資源の重要性に着目し、新経営サービスに入社する。
第一線での営業経験を活かして、顧客企業にどっぷりと入り込むことを得意とする。企業が抱える問題の本質を見極め、企業に根付くソリューションを追及することで、"人(組織)"の活性化に繋がる実践的な人事制度構築を支援している。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

バックナンバー