有期社員の『無期転換』義務化には、今年中に対応策の決定を!
人事制度
平成25年4月施行の労働契約法改正で、有期労働契約が5年を超えたときは、(労働者の申込みにより)無期労働契約への転換が義務化されることになりました。
これは、フルタイム勤務者だけでなく、パートタイマーについても適用されます。ただし、無期雇用はあくまで契約期間を無期化するということであって、必ずしも正社員転換を意味しません。
5年というは「平成25年4月1日以降に開始した有期労働契約」からカウントしますので、早ければ平成30年4月以降の契約から、無期転換の申込みが発生します。企業の対応方針としては、
(1)5年以内の雇止め
(2)無期化(処遇条件変更なし)
(3)無期化(処遇条件改善)
(4)(限定)正社員化
(5)(完全)正社員化
といった選択肢が考えられ、(2)を選ぶ会社が一番多い見込みです。法的対応、雇用確保、人件費抑制を複合的にクリアしなければなりません。
平成30年4月といっても、あと1年半です。間際になって対応策を考えていたのでは、選択肢も狭まってしまいます。できる限り、今年中に対応策を決定してください。
また、有期契約社員を無期転換あるいは正社員化した際に受給できるキャリアアップ助成金が、今年2月より拡充されました。主な助成金額は、以下の通りです。尚、( )内は、中小企業以外の金額です。
①有期→正規(=正社員):1人当たり60万円(45万円)
※改定前は、50万円(40万円)
②有期→多様な正社員(=限定正社員):1人当たり40万円(30万円)
※改定前は、30万円(25万円)
③有期→無期(要5%以上の賃上げ):1人当たり30万円(22.5万円)
※改定前は、20万円(15万円)
まさに、政府は本気で有期社員の正社員化を推し進めようとしています。複数名対象者が発生する企業であれば、百万円単位の助成金が支給されることになります。
これまで申請手続きなどの煩雑さなどを理由に、助成金申請を見送ってきた企業も、是非とも積極的に検討すべきでしょう。
執筆者

山口 俊一
(代表取締役社長)
人事コンサルタントとして20年以上の経験をもち、多くの企業の人事・賃金制度改革を支援。
人事戦略研究所を立ち上げ、一部上場企業から中堅・中小企業に至るまで、あらゆる業種・業態の人事制度改革コンサルティングを手掛ける。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
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