エン・ジャパン「企業の『残業規制』意識調査」
労務関連
働き方改革国会」の目玉として注目度の高い「残業上限規制」について、このほどエン・ジャパン株式会社より興味深い調査結果が出ましたので、紹介したいと思います。
※同社HPサイト『エン 人事のミカタ』( https://partners.en-japan.com )において、企業人事担当者向けに実施したアンケート。回答数670社。詳細は同社プレスリリースをご参照ください。
さて、同アンケートでは様々な調査がなされていますが、「残業規制法案の企業認知度は76%。賛成が48%、反対が40%」という結果が出ています。社員向けアンケートであれば賛成がもう少し増えたと予想されますが、人事担当者向けのアンケートなので、反対が40%程度と多かったのも頷ける結果でした。企業の現場では単に残業規制をするだけでは不十分で、実際には業務効率化による労働時間短縮が求められるところですが、まだまだ取組みは途上であり、成果を実感するところまではいっていないのが実態ではないでしょうか。
興味深かったのは、業種別に残業規制の影響を聞いている項目でした。結果は下記の通りです。
【図3-b】今後「残業規制」が施行される場合、現状の体制では経営に支障が出ますか?(業種別)
業種全体では「大きな支障が出る」「やや支障が出る」の合計で58%と、半数を超えている状況です。具体的な影響の中身については以下の3つが上位を占めています。
「業務の持ち帰りなど、隠れ残業の増加」、「業務が回らなくなる」が同率で43%
「管理職の業務量増大」が34%と続いています。
昨今の人手不足事情も原因の一旦を担っていると思いますが、いかに日本企業が残業を前提とした働き方をしているかということを表していると言ってよいのではないでしょうか。
特に広告・出版・マスコミや各種サービス業など、労働集約型の産業では顕著です。
今まで当たり前だった状態を変えていくのは一筋縄ではいきません。大手企業はじめ、今後多様な改善事例が出てくるでしょうから、とりわけ中小企業においては自社に合った事例を参考にし、少しずつでも確実に取り組んでいくことが求められます。
執筆者
森中 謙介
(人事戦略研究所 マネージングコンサルタント)
人事制度構築・改善を中心にコンサルティングを行う。業種・業態ごとの実態に沿った制度設計はもちろんのこと、人材育成との効果的な連動、社員の高齢化への対応など、経営課題のトレンドに沿った最適な人事制度を日々提案し、実績を重ねている。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
バックナンバー
- 1からはじめる 中小企業の「HRテック入門」
- 急激なベースアップが裏目に出る?パート・アルバイト社員の社会保険適用拡大と「年収106万円の壁」
- 定年延長の失敗例 ~定年延長を目的化しないことの重要性~
- 2025年問題への対応、企業の高年齢者活用は正念場へ
- リスキリングと人事評価制度について考える(1)
- 定年を60歳から65歳に延長する場合、60歳で退職金を受け取ることはできるか?
- 固定残業制度を会社が一方的に廃止することはできるのか?
- 役職定年制は是か非か
- 定年延長はいつするべき?70歳までの雇用は?
- 中小企業の人事・労務を変える、「最新HRテック(HR Tech)」の活用法とは?
- フレックスタイム制の改正
- 新刊書籍紹介(『社内評価の強化書』)
- NTT西日本の子会社契約社員雇止め裁判について
- 定年制度改革の足音
- 最低賃金及び時間外労働割増賃金の計算における除外賃金について