評価表をエクセルで運用する際の手間を軽減するために

評価フロー(例えば、本人評価⇒一次評価⇒二次評価といったように評価を進めるフロー)に沿って評価表をやり取りしていくことは、評価者や被評価者、人事担当者にとって相応の手間を要するものです。特に、一度提出された評価表の差し戻しや再提出等が発生するとその負担は大きくなります。
 
下記は筆者が考える評価表のやり取りにおける運用レベルをおおまかに示したものです。
 
Lv1-1:エクセル運用 紙活用(評価表を紙に印刷してやり取りするイメージ)
Lv1-2:エクセル運用 メール活用(評価表をメール添付してやり取りするイメージ)
Lv1-3:エクセル運用 サーバー活用(評価表を共有サーバーやクラウドサービス上でやり取りするイメージ)
Lv2 :システム運用(評価表をワークフロー機能のあるシステムに載せてやり取りするイメージ)
 
評価表のやり取りの手間の軽減といった効果性においては、理想としてはLv2のシステム運用を目指していくことになるでしょう(その他、評価結果の管理・活用の側面からも効果が期待できることも踏まえて)。但し、コスト面や運用面からすぐにはLv2を目指せないといった状況の企業も一定数おられるのではないでしょうか。インターネット上ではLv2に向けたソリューションを紹介している記事が多い傾向も踏まえて、本稿では、Lv1のなかで運用レベルを上げていく際の考え方を中心に紹介していきます。
 
【Lv1-1からの脱却(紙活用からメール活用へ)】
本ケースの場合、まずは紙活用としている理由を押さえておくことが肝要です。これまでは紙活用で十分であったためという理由を除くと、主に下記2つが想定されるのではないでしょうか。
 

①ソフト面の理由:社員のパソコンスキル等を踏まえて紙活用としている 等

②ハード面の理由:環境が整備されていない(社員ごとにパソコン、アカウントやメールアドレス等が設定されていない)ことを踏まえて紙活用としている 等

 
前者の場合は、慣れの問題から短期的には現行以上に手間を要する可能性もありますが、時や場所を選ばないメールの特性を踏まえて、中長期的には一定の効果が得られることが期待できるため検討を進めていきましょう。
 
一方で、後者の場合は、評価の情報を関係者のみに留めることが困難となる(共有パソコン、共有アカウント・共有メールアドレスで評価表をやり取りすると、自身のみならず他の社員の評価表も見えてしまう)ため、ハード面の理由がクリアできない限りは、Lv1のなかで運用レベルを上げていくことはお勧めしません。補足としてですが、Lv1-1からの脱却に向けた環境の整備が難しい場合は、いきなりLv2を目指すことも一案です。システム運用の場合は社員ごとに個別のIDが発行されるため、全員にパソコン、アカウントやメールアドレス等の準備ができていなくても、インターネットに接続できる環境さえあればプライバシーを守りながら運用していくことが可能となります。複数の社員が順番に共有パソコンを操作して対応(その場合はログインデータが残らないように要注意)していくことも可能ですし、社員個人のパソコンやスマホを操作して対応(その場合は通信費を個人負担してもらうことに要配慮)してもらうことも可能です。
 
【Lv1-2からの脱却(メール活用からサーバー活用へ)】
本ケースの場合、まずは活用する共有サーバーやクラウドサービスの目途を立てることが必要となります。自社で共有サーバーを保有している、或いはすでに活用しているクラウドサービスがあるのであれば、それらを活用できないかシステムの担当者に相談してみるといいでしょう。活用しているサーバーやクラウドサービスがない場合は、例えば、“法人向けクラウドストレージ”、“法人向けオンラインストレージ”といった検索ワードでインターネット検索してみてください。複数のサービスが確認できるので、自社に合ったサービスを検討していきましょう。その際、全社的なシステム化と合わせて検討することも一案です。
 
次に、Lv1-3で運用していくためには、各社員において評価表のアクセス権限を設定すること(例えば、被評価者は自身の評価表のみアクセスできる、評価者は被評価者全員の評価表にアクセスできる等の設定を行うこと)が不可欠となります。設定ミスが発生しないよう慎重に作業する必要もあり、移行時や人事異動発生時には人事担当者に相応の負担がかかることは押さえておかなければなりません。シンプルな構造にするのであれば、被評価者一人ひとりの個人フォルダを作成し、被評価者本人と、その評価者のみにアクセス権限を設定する方式がお勧めです。
 
なお、Lv1-3に移行することで評価表をメール添付する、或いはメールからダウンロードするという手間は省略できますが、例えば被評価者が評価表を上書き(提出)したときに評価者にその通知がいくわけではありません(一部のサービスでは上書き通知が届く機能もありますが)。上書きしたという報連相も省略したいということであれば、いずれLv2のシステム運用を検討していくことも一案です。
 
以上、本稿ではLv1のエクセル運用のなかで評価表のやり取りの手間を軽減していくための考え方について紹介しました。評価システムを取り入れることなく、エクセル運用のなかでできる工夫は限定的ですが、自社の状況に応じてご参考にいただけますと幸いです。

執筆者

辻 輝章 
(人事戦略研究所 コンサルタント)

自らの調査・分析を活用し、顧客の想いを実現に導くことをモットーに、国内大手証券会社にてリテール営業に従事する。様々な企業と関わる中で、社員が自ら活き活きと行動できる企業は力強いことを体感。"人(組織)"という経営資源の重要性に着目し、新経営サービスに入社する。
第一線での営業経験を活かして、顧客企業にどっぷりと入り込むことを得意とする。企業が抱える問題の本質を見極め、企業に根付くソリューションを追及することで、"人(組織)"の活性化に繋がる実践的な人事制度構築を支援している。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

バックナンバー