人事制度の成否は伝え方で決まる
人事制度
きちんと説明したのに、なぜ理解してくれないだろう。
このような悩みを抱える経営者や人事担当者は多いのではないでしょうか。社員のことを考えて、時間をかけて作り上げた人事制度が社員に理解されていない。あろうことか、意図しない形で受け取られ、社員の不満につながっている。これほど、残念な結末はありません。
なぜこのような結末を迎えてしまうのか。これまでの筆者の経験を踏まえて、よくある失敗パターンをあげると、以下のような具合です。
パターン①:ルールの説明に終始してしまう
人事制度改定は、社員にとって重大なルール変更です。それは間違いありませんが、ルールばかりを一方的に説明されては、社員も退屈です。
社員にとって関心がある情報は、
・会社がどういった考え方をしているのか?
・改定によって、自分たちにどのような影響があるのか?
といった点です。ルール説明を行いつつも、上記2点を盛り込んだ説明を行いましょう。
パターン②:経営目線の話題をストレートに伝えすぎてしまう
人事制度改定の理由としてよくあげられるのは、内部・外部の環境変化への対応です。社員に制度改定の理由を伝えるために、社員説明会でこういった話題を持ち出される企業をよく見かけます。経営サイドとしては、社員にも理解してほしいテーマといえます。しかし、こういった話題は、管理職は理解できても、一般社員には難解で理解できないということも多いです。とある企業で、一般社員対象に人事制度説明会の感想をインタビューした際には、
・難しい話をされて、何かごまかされているように感じた
・何となく理解できたけど、そういったことは自分には関係ない
といったことを耳にしたこともあります。
したがって、経営目線のテーマを伝える際には、社員の属性を踏まえた準備が肝要です。具体的には、①社員が自分事として捉えられるような具体例やエピソードを準備する、②なるべくポイントを絞って端的に伝える、といった工夫を行いましょう。
パターン③:一度説明すれば、理解してくれると思い込んでいる
一度説明すれば、社員が人事制度をきちんと理解できると思い込むのは間違いです。社員が社員説明会で理解しようとするのは、自分にとって関心がある内容です。例えば、家族持ちの社員にとっては、家族手当は重要な関心事です。その一方で、独身の若手社員にとっては関心の薄い内容であることが多いです。同じ説明でも理解度には差が生じるのは当たり前です。しかし、説明した際には関心が薄くとも、どこかのタイミングで関心をもつことはよくあることです。そのようなタイミングで、「知らない」「聞いていない」とならないように人事制度の内容を知ることができるツールや相談できる窓口を予め準備しておくことが肝要です。
◆人事制度の「伝え方」は、念入りに準備をする
人事制度の成否を分ける要素として、社員への伝え方はかなり大きなウェイトを占めると筆者は考えています。上手く伝えられると、新制度へスムーズな移行が図られます。逆に、失敗すれば、社員から「よくない制度」というレッテルが張られます。これほどデリケートな工程にも関わらず、十分な準備がないまま進めている企業は多いように思います。スムーズな制度移行ができるように、説明内容や説明のストーリー作り、話し方など細かな点も入念に準備した上で臨みましょう。
執筆者
岸本 耕平
(人事戦略研究所 シニアコンサルタント)
「理想をカタチにするコンサルティング」をモットーに、中堅・中小企業の人事評価・賃金制度構築に従事している。見えない人事課題を定量的な分析手法により炙り出す論理的・理論的な制度設計手法に定評がある。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。