人事部門にエース級人材を配置するメリット
人事制度
人事コンサルタントという職業柄、人事部・総務部の方々と接する機会が多くあります。
そこでよく感じるのは、「人手不足の人事部門」「人材不足の人事部門」が多数を占めているということです。確かに、営業職を増やせば売上拡大に直結するかもしれませんし、製造職を増やせば生産量拡大に直結するかもしれません。人事担当者を増やしたからといって、直接業績が上がるわけではなく、むしろ人件費負担が増えるだけ、と考える企業経営者は少なくありません。新卒で優秀な学生が採用できたとして、営業職や商品開発職など、優先的にその会社の花形部門に配属したくなる気持ちも分からないではありません。
しかし、です。
優秀な社員を人事部門に配属すれば、より優秀な新人を採用できる可能性は高まります。その昔、私が人材採用のコンサルティングを行っていた頃、「採用担当者以上の人材は採用できない」と聞いた言葉が、今でも頭に残っています。科学的に証明するのは困難かもしれませんが、昨今でも「最後は、人事担当者やリクルーターの人の魅力に惹かれて、この会社に決めました」という学生は少なくありません。
もし、エース級人材が人事部門に居たお陰で、何人もの優秀な社員を入社させることができたなら、十分なおつりが来るのではないでしょうか。
もちろん、採用だけではありません。
社員にとって魅力的な人事制度や人事施策を考え実行したり、効果的な教育のしくみを整えてくれるかもしれません。そうすれば、社員の定着からレベルアップ、活性化など、全社的に良い影響を及ぼします。営業職1人が拡大する売上や受注額も重要ですが、全営業職の生産性を何%か引き上げることができれば、それを上回る拡大が期待できるでしょう。
実は、人事制度や人事施策に変革が必要なタイミングでは、人事部門一筋というより、他部門を経験した社員の方が活躍するケースはよく見られます。他部門から見ていて、自社の人事政策に対する問題点や不満について、身をもって実感していたからではないでしょうか。一方で他部門の上司にとっては、優秀な部下を異動させることに抵抗があるでしょう。そこで、経営者が全体最適の視点で判断する必要があります。中小企業の中には、経営者や後継経営者自らが、人事・採用責任者として采配を振るうことで、効果を挙げている会社もあるのです。
企業経営者の方には、人事部門にエース級人材を投入するメリットについて、今一度お考えいただければと思います。
執筆者
山口 俊一
(代表取締役社長)
人事コンサルタントとして20年以上の経験をもち、多くの企業の人事・賃金制度改革を支援。
人事戦略研究所を立ち上げ、一部上場企業から中堅・中小企業に至るまで、あらゆる業種・業態の人事制度改革コンサルティングを手掛ける。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
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