定性的な目標の具体化に向けたポイントと、具体的な目標設定の例
目標管理
人事評価制度に目標管理を導入している企業様より、定量的ではない、いわば定性的な目標への対応に関する悩みを聞くことがあります。目標が定性的であることにより、「目標設定の内容が具体性に欠けることで達成したか、未達成なのかが判断できず、期末に適切に評価ができない」、あるいは「目標達成の状態が曖昧であるがゆえ、上司と部下で達成の水準を期初に握り切れないがゆえに、期待通りの成果に至らない」といったリスクがあります。目標設定は定量化する方が評価しやすいと理解しているものの、例えば間接部門を中心として、定性的な目標を立てざるを得ないことも多いのではないでしょうか。
定性的な目標において、より適切で公正な人事評価を実現したり、期待する目標を期待通り達成したりするためには、目標をなるべく具体的に記述することが重要です。本稿ではそれに向けたアプローチを2つ解説するとともに、そのポイントに沿った書き換えの例を紹介します。
1.現状に着目する
一つ目は、現状できている程度やできていない程度を具体化し、そこからのプラスαを考えるというアプローチです。例えば、能力伸長がテーマとなる下位等級者に向いています。
<特に間接部門を中心によくある定性目標の書き換えの例>
(例①)
【書き換え前】
「自身の担当業務(事務的定型業務)のレベルアップを行う」
【現状のレベルを具体化】
・見積もり業務は、基本的な内容であればミスはないが、複雑な内容になると抜け漏れが一定発生している
・労務管理の業務は、独力でできるもののかなり時間を要するものであり、かつ自分以外にできる社員がいない
【書き換え後】
・見積もり業務は、関係者複数人に確認が必要な複雑な内容であっても、独力でミスなく作成までできるようになっている状態
・労務管理の業務は、より効率化・平準化を図れるよう、部下にも一部権限移譲できる仕組み(マニュアル作成等)を考え、自身が関与せずとも部下が業務を遂行できる状態
(例 ②)
【書き換え前】
「業務効率改善プロジェクトにおいて、これまで以上に貢献する」
【現状のレベルを具体化】
・現在○○業務を依頼しているシステム会社に支払う費用が高い
【書き換え後】
・依頼している業務のうち、社内でできることはないかを分解したうえで具体的な提案をプロジェクト会議で提案できている。かつ、他に依頼可能な協力会社の情報収集を行い、選定にあたって必要な情報を整理し、定期打合せの中で自分なりの意見を述べられるようになっている状態
上記のように現状のレベルを具体化した内容をもとに書き換えを行うと達成基準が客観的に見てわかりやすくなるというメリットがあります。
2.理想の状態に着目する
もう一つは、現状に加えて、目指すべき「理想の状態」という両方の観点から具体化を図る、というアプローチです。「理想の状態」としては、例えば全社や部、課といった組織の目標が活用しやすいでしょう。その組織目標が達成された状態とはどういう状態なのかを明確化することで目標を設定します。こちらは組織目標に責任を負うべき中位~上位等級者向きといえます。
<特に間接部門を中心によくある定性目標の書き換えの例>
(例 ①)
【書き換え前】
「部署間の連携を強化する」
【上位目標が達成された状態の明確化】
・部署間のコミュニケーションが図りやすい仕組み、風土への改善ができており、その結果、部署間で協力した共同商品が開発されているなど目に見えるアウトプットが出ている状態
【書き換え後】
・部署間のコミュニケーションが図りやい仕組みを企図して、●●の実施、△△のような新たな取り組みを行う。そして、まずは~~の分野において、6月までに部署間で連携する取り組みの開始、12月までに新商品のサンプルが出ている状態
(例 ②)
【書き換え前】
「部下育成を強化する」
【上位目標が達成された状態の明確化】
・3等級のメンバーが独力で●○の業務を遂行できるようになる
・通常の業務に加えて、新規プロジェクトのリーダーを任せることができ、上長が関与せずとも一定の成果が出せるようになっている状態
【書き換え後】
・各人の育成課題を明確化し改善策を計画的に落とし込む。計画を確実に実行することで期末の段階では、3等級のメンバーが独力で●○の業務を遂行できる状態
・定期的な1on1の実施を通じて、リーダーとしてプロジェクト推進に必要なことを伝達し、部下がPDCAを回せる仕組みを作り、期末の段階では、プロジェクトの目標が達成でき自走できている状態
などが具体例になります。
以上、定性的な目標設定の具体化に向けたアプローチを紹介しました。同様の悩みを持たれているのであれば、ぜひ活用いただければと思います。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
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