2013年度税制改正 給与増加分の最大10%の法人税が減税に!!
人事制度
所得拡大促進税制の対象企業
◇2013.4.1~2016.3.31の間に開始する事業年度
◇基準雇用者給与等支給額(2013年4月1日以後に開始する各事業年度のうち、最も 古い事業年度の直前事業年度の給与等支給額)に対する増加額の割合が5%以上
◇雇用者(役員など除く)の平均給与(退職金など除く)が、前年度を下回らない企業
◇雇用者給与総額の増加額の10%を当期法人税から減税。 ただし、中小企業(大企業の子会社等を除く資本金1億円以下法人)は、法人税額の20%を限度
中小企業以外は、法人税額の10%を限度
これまで雇用者数に対する減税や助成金はありましたが、2013年度からは給与額アップに対する法人減税が打ち出されました。過去15年続いた企業の給与水準ダウンの傾向に、歯止めをかけることができるでしょうか。
それでは、具体的なケースを使って、シミュレーションをしてみましょう。
A社
①資本金1億円以下の中小企業の2014.3月期決算
②当年度の法人税 5,000万円(減税前)
③前年度の社員数(パート等含む)90名 給与総額 4.5億円
④当年度の社員数(パート等含む)100名 給与総額 5.2億円
→給与総額(≒雇用者給与等支給額)は、5.2億円÷4.5億円=約15.6%アップなので条件クリア
→平均給与は、【4.5億円÷90名=500万円】から【5.2億円÷100名=520万円】とアップしており条件クリア
→減税額は、【給与増加額 5.2億円-4.5億円=7,000万円】×10%=700万円となり、中小企業の法人税額の20%【法人税5,000万円×20%=1,000万円】限度条件を全額クリア
⇒ということで、7,000万円+社会保険料などの人件費アップに対して、700万円の減税ということになります。
(上記は政府方針による大まかな試算ですので、最終的には追加の条件が加わるかもしれません)
「その程度しか減税にならないならメリットは低いよ」「減税は時限措置だから、将来も続く固定給は上げられない」といった声が聞こえてきそうですが、次のように考えるのが妥当ではないでしょうか。
確かに、「この減税措置が出来たから雇用や給与を増やそう」という会社は少数でしょう。むしろ、リストラによる利益捻出ではなく、雇用や給与を引き上げながら業績拡大している元気な会社に対して、国がバックアップする政策といえます。また、固定給を引き上げるのは慎重にしたいという会社の場合は、賞与や業績給などを増額すればよいでしょう。まずは、自社に当てはめた場合の減税額シミュレーションから始めてみてはいかがでしょうか。
執筆者
山口 俊一
(代表取締役社長)
人事コンサルタントとして20年以上の経験をもち、多くの企業の人事・賃金制度改革を支援。
人事戦略研究所を立ち上げ、一部上場企業から中堅・中小企業に至るまで、あらゆる業種・業態の人事制度改革コンサルティングを手掛ける。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
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