目標管理 第1回 目標管理の原典と最終形
目標管理
1-1. そもそも目標管理とは何か
P.F.ドラッカーが「現代の経営(自由国民社1956年、ダイヤモンド社1965年、原著は1954年)」の中で紹介したのがスタートです。日本では、成果主義的な考えや運用の難しさなどで誤解の多い目標管理ではありますが、もともとは、部下のコントロールや人事考課のためなどではなく、仕事を達成するための動機づけ(モチベーション)手段として目標を利用することを提唱したものです。
目標管理は、MBO(Management by Objectives)と略されますが、実は原文では「Management by Objectives and Self-control」と書かれています。日本では、この「and Self-control」が抜けてしまっていることや、「目標による(マネジメントの)管理」ではなく「目標そのものの管理」という、成果主義的、ノルマ管理的な解釈がなされているのが実情です。
1960年頃の第一次目標管理ブームの際には、能力開発など人材育成に焦点が当たっていましたが、これが本来的なものに近いと考えています。つまり、「and Self-control」にも焦点をあて、目的のために何に取り組むかを明確にし、自分自身を奮い立たせるとともに、自らを追い込んでいくことで目標の達成が可能となるような「自主目標・自主管理による有言実行」こそ、ドラッカーが提唱した理論なのではないでしょうか。
1-2. 目標管理の最終形=夢実現理論
洋の東西を問わず歴史を振り返ると、不可能といわれるような非常に困難な目標に向かっていく人や組織・集団があり、実際に目標を達成した例は枚挙に暇がありません。これらは目標というよりは、信念のある「夢」そのものです。
実は、普段行われている比較的短期的な目標を追いかけることは、長期的で偉大な目標(夢)を達成することとはそぐわないことが多いです。しかし、この長期と短期の関連性・整合性を取る必要があります。そこで、目標管理をもう一歩進めて、長期的かつ社会的・精神的に意義のある夢として、まずは自分の人生の目標、仕事人生の目標などを設定してみてはどうでしょうか。それを実現するための短期の取り組みが目標管理であるという位置づけにすると目標管理も活きてきます。
堂々と志や夢と言えるような大きな目標を設定することこそが、自分自身や組織を突き動かす原動力であり、個人でいうと能力向上、人間性向上つまり人格形成、組織では社会的使命の追求のための組織発展に繋がっていくのではないでしょうか。これが目標管理を発展させた最終形の『 夢実現理論 』です。
とはいうものの、このような使命感強烈型の人は少なく、世間から見ると天才のように映ります。ドラッカーも天才の一人でしょう。天才の真似をすることが難しいのは当然です。そこで、次回以降は、天才でなくとも目標達成をしていく具体的な手順などを記載していきます。
執筆者
佐藤 耕一
(人事戦略研究所 パートナーコンサルタント)
鉄道会社にて信号通信設備及びITシステムの設計業務を担当し、その後、教育事業会社で管理本部長として学習塾の運営と教育機関向け経営コンサルティング業務に携わる。前職では、電子部品メーカー系列のコンサルティングファームにて人事コンサルティング業務に携わるとともに、部長として同事業部門を率いる。国内外にて、中小企業から一部上場の大企業まで様々な規模を対象にし、あらゆる業種業態への人事諸制度の導入・運用実績がある。経営統合や分社化、経営破綻後人事、新設労働組合対応、海外法人、医療、介護、特殊法人など、豊富な事例と経験があり、特に運用に強みを持つ。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
バックナンバー
- 目標管理 第21回 目標の連鎖/方針の連鎖①
- 目標管理 第20回 WBSとGantt chart
- 目標管理 第19回 クリエイト目標
- 目標管理 第18回 OKR
- 目標管理 第17回 目標管理のPDCAは古い?
- 目標管理 第16回 チャレンジとチェンジ
- 目標管理 第15回 業務は目標ではない
- 目標管理 第14回 要因を分析する
- 目標管理 第13回 競争する
- 目標管理 第12回 ご褒美を用意する
- 目標管理 第11回 チェックを受ける
- 目標管理 第10回 自ら踏み込む
- 目標管理 第9回 周りを巻き込みながら目標を達成する方法
- 目標管理 第8回 目標管理で挫折する4つのタイプとその対策
- 目標管理 第7回 目標管理での禁句例