2025年問題への対応、企業の高年齢者活用は正念場へ

1.2025年まであと1年

いわゆる「2025年問題」と言われる、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる年まで、あと1年となりました。日本における高年齢化問題がピークになり、社会保障費の増加や深刻な人材不足の発生等を懸念して十数年前から提唱されていた2025年問題ですが、いままさにその通りになっていると感じられます。
 
企業における高年齢者雇用の側面でいえば、老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給開始年齢が完全に65歳になるのが2025年(女性は5年遅れで2030年)であるし、高年齢者雇用継続給付の給付率が引き下がるのも2025年からとなります。
 
2020年からの5年間でも様々な法改正がありました。2021年のいわゆる「同一労働同一賃金法制」では、定年再雇用者の賃金制度設計に係わる内容が国のガイドラインで示されることとなりましたし、関連する裁判例もいくつも出てきています。2023年には高年齢者雇用安定法の改正がなされ、定年延長の義務化までにはいたりませんでしたが、70歳までの雇用確保が企業の努力義務として課せられるなど、大きな1歩もありました。定年延長に関して言えば、先んじて国家公務員の定年延長が60歳から引き上げられたのも2023年でした(こちらは段階的な定年延長)。
 
こうした状況下で、これまでの比較的「緩い」運用を是としてきた企業の多くが、ここにきて高年齢者層の雇用、あるいは人事処遇のあり方について、抜本的な見直しを余儀なくされてきています。特に高年齢者層の賃金面の問題については、昨今のインフレ状況、それに対して賃金上昇(実質賃金ベース)が十分に追いついていない状況も相まって、これまで高年齢者層に対して低い賃金ベースを設定していた企業ほど、難しい課題としてのしかかってきていると言えるでしょう。

 
 
2.正念場を迎える企業の高年齢者活用~手遅れにならないために~

2025年の各種法改正が次のターニングポイントになることは間違いないでしょうし、それから2030年までの5年間は、更に多くの改正が急激に進んでいくことも想像に難くありません。70歳までの雇用確保が努力義務から正式に義務化される可能性、またいよいよ65歳への定年延長が完全に義務化される可能性も、あくまで可能性の話ではありますが、急激に議論が加速してきてもおかしくはない、と見るべきでしょう。

 

企業においても、組織全体の高年齢化が加速度的に進んでいきますから、単に数名の高年齢者について雇用を延長すればよい、賃金を上げればよいというだけでは企業運営がスムーズに回らない状態になるおそれがあります。いよいよ60歳代、70歳代の社員が半数を占めるような組織になる将来も見据えて、高年齢者活用について抜本的に見直していく必要があるでしょう。
 
あるいは、高年齢者層の仕事における役割を縮小しながら、若返りを意図的に図っていく、という方針もあるかもしれません。いずれにしても、大きな転換期に立たされているという意識でもって、様々な観点で将来の組織運営について検討をしていく必要があります。

 

高年齢者活用の議論はいよいよ正念場を迎えます。これ以上問題を先送りすると、手遅れになる企業も出てくるでしょう。まずは最低限、自社の現状を振り返るところからスタートしてみられることを推奨します。

 

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■シニア社員の活躍を促進する定年延長・再雇用制度改革情報サイト
定年延長.com https://teinen-encho.com/

 

執筆者

森中 謙介 
(人事戦略研究所 マネージングコンサルタント)

人事制度構築・改善を中心にコンサルティングを行う。業種・業態ごとの実態に沿った制度設計はもちろんのこと、人材育成との効果的な連動、社員の高齢化への対応など、経営課題のトレンドに沿った最適な人事制度を日々提案し、実績を重ねている。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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