受け身姿勢の部下は上司のマイクロマネジメントが原因?改善の方法とは?

「部下が受け身の姿勢で困っている」という悩みを管理職の方から聞く機会が増えてきました。程度の差はあれ、部下に対して「主体的、能動的に動いてほしい」という思いを持っている管理職の方は多いのではないでしょうか。
 
ではなぜ、部下が受け身の姿勢になってしまうのでしょうか。原因は様々ですが、その中でも、上司による行き過ぎたマイクロマネジメントがその原因になっていることが考えられます。マイクロマネジメントとは、上司が部下に対して、細かく指示を出したり、報告を頻繁に求めたりして、細かく行動を管理することを指します。この背景として、2019年に働き方改革関連法が順次施行されたことや新型コロナウイルスの影響によるリモートワーク導入の加速など、コミュニケーションの在り方や部下のマネジメント方法が変化したことが関係していると思います。例えば、働き方改革関連法では「長時間労働の是正」に関する内容が定められたことで、より部下に対する時間管理がシビアになりました。また、リモートワーク導入では、細かいニュアンスが伝わらないなどという理由から指示が細かくなりすぎてしまったり、状況を把握しようとするあまり細かく報告を求めすぎたりした結果としてマイクロマネジメントに繋がっていることが考えられます。
 
ではなぜ、マイクロマネジメントが受け身の姿勢につながるのでしょうか。人間は元来、自分自身に選択や工夫の余地がある中で仕事をすることにより、モチベーションが上がり主体性が生まれるものです。ですので、部下自身が工夫や選択をする余地を適度に残すようにマネジメントすることが、モチベーションの向上や主体的・能動的な動きへとつながります。逆に、あまりにも細かく指示されたり、行動を管理されたりすると、部下自身に工夫や選択の余地がなくなり、言われたことだけを行っていればよいということになってしまいがちです。それ故、マイクロマネジメントは、部下のモチベーションを低下させ、受け身の姿勢を助長することになってしまうのではないでしょうか。
 
実際、前職の経験において私自身、同じ業務内容でも上司の指示の出し方によりモチベーションの違いを感じた経験があります。具体的には、ある上司Aは私に「見本通りに資料を作成しろ」という指示を出し、ある上司Bは「見本を参考にしたうえで、お客様の視点で作成しろ」と指示を出しました。後者の指示の場合、資料をみるお客様の年齢・場所を想定して細部を変更するなど、自分自身で考え工夫する余地が生まれました。結果としてモチベーションアップに繋がり、主体的・自律的に仕事に取り組むことができました。
このように、自分自身で工夫や選択ができているという「自律性」が内発的モチベーションの源泉となっているということは、心理学者のエドワード・デシによる「自己決定理論」においても提唱されています。
 
この理論や私の実体験を踏まえると、部下が自分自身で工夫や選択できる余地を残した仕事の任せ方・指示の出し方が重要です。そのためには、①部下のこと(本人の仕事レベル、いまの成長課題、これまでの経験等々)をきちんと把握すること。②その部下にとってストレッチな範囲・レベルの仕事を設定(業務の切り出しや権限委譲等含む)してアサインすること、③アサインする仕事の目的を言語化して伝え、理解しているかを確認すること等が必要です。このような仕事の任せ方・指示の出し方をすることが、受け身の姿勢からの脱却に有効であると思います。
 
以上本稿では、受け身姿勢の部下に対して「自律性」の点からアプローチすることについて紹介しました。マネジメントの一つの切り口として、ぜひご参考になれば幸いです。

執筆者

長尾 拓実 
(人事戦略研究所 コンサルタント)

前職では、中小企業を中心とした採用支援事業に約3年間従事。
企業・求職者双方と接する中で、働き甲斐ある職場の実現において社員一人一人が活きる組織づくりが重要だと実感。
この経験を通じて「組織づくりを基軸に中小企業の成長に貢献したい」と想い新経営サービスに入社。
課題に対して粘り強く、企業の良さが活きるコンサルティングを心掛け日々活動している。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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