役職定年制は是か非か

組織内における社員高年齢化の進展を背景として、役職定年制の是非について検討を行う企業が増えてきています。組織の新陳代謝を図るためには役職定年は有効に機能すると考えられる反面、70歳雇用時代においては役職定年後の雇用期間もどんどん長くなっていくため、役職定年になった社員のモチベーションや処遇をどのように考えるかも企業の頭を悩ませる問題になります。

 

役職定年制度を採用している企業の割合はどの程度あるのでしょうか。厚生労働省の調査を基に確認してみましょう。

 

図表①を見てください。年代ごとの役職定年制度の導入率の推移を示した労務行政研究所の調査ですが、1997年の47.9%をピークとして、その後は導入率が低下し、2018年時点では30%を切る状態となっています。

 

図表①役職定年制導入率の推移

役職定年制導入率の推移

 

1990年代後半に導入が一気に進んだ理由としては、いわゆる団塊の世代が50歳代となったことを受け、管理職ポスト不足の解消と組織人員構成の適正化を行いたいという企業側の狙いがあったと、一般的に論じられています。しかしながら、それ以後は高年齢者雇用安定法の改正で雇用延長が進んできていること、団塊世代とそれ以後の世代との人員構成上のギャップなどを背景に、役職定年制の導入率自体は低下してきています。

 

このような状況からすると、無理に役職定年制の活用を推し進める必要性は必ずしもないのではないかと?という風にも考えられますし、役職定年制の廃止を行った/検討している、という企業も増えてきています。ただ、実際にはそう単純な話でもなく、役職定年制を導入するにしても廃止するにしても、中長期的な組織運営の観点からすると、メリットの裏に大きなデメリットもまた隠されているということを各社とも意識する必要があると考えます。

 

さて、会社視点での役職定年制のメリット・デメリットについてまとめると、一般的に以下のようなことが考えられます。あくまで一例ですが、図表②に示しますので、参考にしてみてください。

 

図表②役職定年制のメリット・デメリット(一例)

メリット デメリット
・ポスト不足・ポスト固定化の解消

・組織内新陳代謝の促進

・人員構成の適正化

・役職定年到達者の中長期的なモチベーションダウン

・組織マネジメント機能の低下

(役職定年後、後継者不足の場合)

 

上記内容を社内でとりまとめ、共有しておくことにより、役職定年制のみならず、シニア社員の活用を含む組織運営の在り方自体を幅広く検討する機会にすることができますので、ぜひ一度取り組んでみてください。特に役職定年制の運用に際しての評価・賃金制度の運用に関して筆者がまとめた記事が無料で公開されていますので、参考にしてください。

 

役職定年制の導入・廃止と評価・処遇制度(エルダー2021年12月号 13P~)

https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/q2k4vk0000047f86-att/q2k4vk0000047fak.pdf

執筆者

森中 謙介 
(人事戦略研究所 マネージングコンサルタント)

人事制度構築・改善を中心にコンサルティングを行う。業種・業態ごとの実態に沿った制度設計はもちろんのこと、人材育成との効果的な連動、社員の高齢化への対応など、経営課題のトレンドに沿った最適な人事制度を日々提案し、実績を重ねている。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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