2025年から定年延長が急増!? 企業はどのように対処すべきか

「2025年問題」という言葉があります。いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、2025年からは実に日本国民の4人に1人が75歳以上という、世界的にも類を見ない超高齢化社会に突入しました。

 

2025年問題では、労働力人口の減少、社会保障費の増大、医療・介護の問題など、シニア人材を取り巻く様々な課題が挙げられています。政府が積極的に推進する雇用延長もその対策の一環であり、2025年から新に関連する法改正が行われています。具体的には、①厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)の支給開始年齢が65歳に引き上げられること、②高年齢雇用継続給付の支給率が引き下げられること(今後も段階的に引き下げ予定)、などが挙げられます。これらの法改正は何れも、企業に対してシニア人材の雇用延長を更に推進していくことに加え、給与処遇自体の引き上げを行っていくことについても要望する内容と言って差し支えないでしょう。

 

こうした状況の中、企業においては定年延長という形で制度改革を行う例が急増しています。厚生労働省が毎年発表している、令和6年「高年齢者雇用状況等報告」の集計によれば、定年を60歳より上に引き上げている企業は定年制を廃止している企業も含めると3割を超える結果(令和6年6月1日時点)となっています。実に3社に1社が定年延長を実施済みの状況であり、2025年問題を契機として、これから更に増加していくことが十分に予想されます。

 

従来は大半の企業がいわゆる「継続雇用制度、定年再雇用制度」を採用しており、定年延長に関しては消極的な状態でしたが、いよいよ様子見だけできる時代は終わったとも言えます。とはいえ、流行りに乗っかるように定年延長をしさえすればよいということではありません。全社的に人件費の増加を伴うことが予想されるという点ではリスクのあるテーマでもありますし、シニア人材の働き方も含めて、社員が長く働く中で会社への継続的な貢献が実現できるよう、人事制度改革についても同時に推進していく必要があります。

 

今後は様々な業種・業態・規模の企業において定年延長の事例が増えてきますので、参考にできる情報が多く出てくることも予想されます。特に経営者とともに定年延長を主導する立場である人事担当部門については力量が試されるテーマでもありますから、まずは自社の現状把握、そして積極的に他社の情報収集についても行っていただきたいと思います。

 

 

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執筆者

森中 謙介 
(人事戦略研究所 シニアマネジャー)

人事制度構築・改善を中心にコンサルティングを行う。業種・業態ごとの実態に沿った制度設計はもちろんのこと、人材育成との効果的な連動、社員の高齢化への対応など、経営課題のトレンドに沿った最適な人事制度を日々提案し、実績を重ねている。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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