評語は何段階で設定すべきか?
人事考課(人事評価)
多くの企業において、人事評価の最終結果はSABCD等の何段階かの評語にランク付けを行います。評語は、賞与や給与改定・昇降格の判断根拠をルール化する場合、設定をする必要があります。今回は、評語の段階数について触れてみたいと思います。
まず、評語を決定する際の考え方として、絶対評価と相対評価があります。絶対評価は、定められた評価点の基準にしたがって評語(70~90点未満⇒A評価、90点以上⇒S評価等)を決定する方法です。一方、相対評価は、評語の出現率が一定の枠に収まるよう、相対的な位置づけ(評価点数の上位5%はS評価等)によって決定する方法です。今回は、多くの企業で取り入れている相対評価に焦点をあてたいと思います。
評語の段階数の考え方
評語の段階数を少なくする(例えば3段階等)と、各ランクの差を明確に表現できる一方で、きめ細かな評価を行うことができません。逆に段階数を多くする(例えば10段階等)と、きめ細やかな評価が可能になる一方で、各ランクの違いを言語化することが難しくなります。ここはトレードオフですので、評価結果の反映先や運用実現性を踏まえて設計することをお勧めします。例えば、評価結果を昇給に反映させる際に、最大昇給額と最小昇給額の格差を仮に1万円と設定した場合、評語の段階数を15段階にすると、各評語の金額差は700円程度になります。この金額差をよしとするか否かは考え方次第ですが、段階数決定の判断材料になります。
また、ある程度の“型”は決まっていますので、今回は一般的によくある3種類の評語設計をご紹介させていただきます。なお、各設定例の割合は、あくまで一例であることにご留意ください。
①5段階の設定例
5段階の設定は、一般的によく見受けられるオーソドックスなパターンです。各評語について、Sを「超優秀社員」・Aを「優秀社員」・Bを「標準社員」・Cを「標準よりやや劣っている社員」・Dを「問題のある社員」と定義づけしたとします。その際、「人事評価のみならず、結果の分布は平均値を中心にした正規分布になる」という考え方に基づき分布を設定すると上図のようになります。
ただし、組織人数が少ない企業では、分布ありきで評語を決定してしまうと、社員間で評価に差がない場合でも、無理やり差を付けることになってしまいます。そこで、S・Dについては、分布割合を設けずに、評価点が90点以上の場合はS、40点以下の場合はDにランク付けする、というルールを設定しておく方法もあります。
②6段階の設定例
次に、偶数で段階数を設定する例です。奇数の場合、真ん中のランクがあるため中心化傾向になりやすいため、これを回避し、「標準評価を作らない=(標準より上なのか下なのかを明確に線引きする)」という考え方に基づいて設定する場合です。
③7段階の設計例
最後に7段階での設定例です。評語による処遇への反映をより細かく設定したい場合に有効です。一般的には、給与改定よりも、評語による金額差を設けやすい賞与に反映したいときに設けることが多い傾向にあります。なお、上記例の分布割合は、①のパターンに近い山形の分布構造で、B評価を標準評価に設定した例です。①のA評価を、S評価に近い社員A+とB評価に近い社員Aの2種類に切り分けることができ、①に比べてよりメリハリをつけることが可能となります。
最後に
今回は評語の段階数の設定例として3種類を取り上げました。これ以外にも4段階や10段階等の段階数設定例もあれば、同じ5・6・7段階であっても分布の設定を変えることも可能であり、各社各様の設定方法があります。なお、給与改定や昇降格に反映する評語と賞与に反映する評語の段階数を使い分ける方法もあります。
処遇への反映をどのように行いたいかを踏まえつつ、運用実現性を加味して、自社にとって最適な評語の段階数を設定して頂ければと思います。
執筆者
鈴江 遼
(人事戦略研究所 コンサルタント)
大学では人事組織経済学を専攻し、人的資本や行動経済学等の理論を学ぶ。企業内の人事ヒアリング調査を行った経験から、「人事制度の構築・運用のいろはを学び、会社経営の支援がしたい」という思いを持ち、新経営サービスに入社。
常に論理性と一貫性を保ち、本質を突いたアドバイスができるコンサルタントを目指し、日々挑戦している。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
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