テレワーカーの評価不安を解消する2つのポイント
労務関連
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークの普及が進んだ。2023年5月8日から『5類感染症』とする政府方針もあり、テレワークの実施率は全体傾向として減少の方向に進んでいるようであるが、一部の大手企業やIT企業を中心に、今後も継続実施することを発表する企業が現れている。
ところで、ある調査結果※によると、テレワーカーの不安感として、「上司や同僚から仕事をさぼっていると思われていないか不安(38.4%)」、「上司から公平・公正に評価してもらえるか不安(34.9%)」となっており、一定割合で、いわゆる「評価不安」を抱えている。また、「公平・公正に評価してもらえるか不安だ」と思っている不安層は、非不安層よりも転職リスクが1.8倍になるという結果も出ている。
人材不足が騒がれている昨今、評価不安を放置することは致命傷にもなりかねない。評価不安を解消し、少しでも人材流出を防ぐことが求められる。ではその手立てはあるのだろうか。本稿ではテレワーカーに焦点を当て、評価不安を解消する方法をご紹介する。
まず押さえておくべきことは、特にテレワーカーは、日常業務の取組み状況や姿勢を、同僚や評価者である上司が把握し難く、孤立化・孤独化しやすい状況にあるという点である。この状況をいかに軽減できるかがポイントとなる。このポイントを押さえつつ具体策を2つ取りあげてみる。
具体策その① 1on1ミーティングを定期開催し、部下の状況把握する
部下の業務面やメンタル面等の状況といった情報を収集する機会を定期的に設ける、いわゆる「1on1ミーティング」を定期開催することが挙げられる。これにより、テレワークによって失われたコミュニケーション機会を定期的に補いつつ、部下自身に現在の業務状況や成果、そのプロセスについて説明する機会を設けることが可能となる。この定期的な機会は、成果以外の要素も含めて評価する場合に部下の不安を解消することへの有効打となる。加えて、業務プロセスを振り返る際には、同時にその際に感じた課題感や次回への改善事項などを述べてもらうことにより、育成にも有用な機会となり得る。
また、ミーティング開催の頻度は従業員の成長レベルや勤続年数に応じて適宜変更すればよいだろう。ある程度自走できる社員に関しては、月一回程度の頻度でもよいかもしれないが、新入社員といったセルフマネジメントが難しい社員に対しては、週一回程度のペースで開催するのも一案である。
具体策その② 一人にさせない体制や環境をつくる
例えば、「経験の浅い従業員に対し熟練社員をアドバイザーとしてつける」「必ず複数名で業務アサインする」といった体制面での工夫がある。上司以外の人とも業務で否応なく接する体制にすることで、周囲の人とのタッチポイントを増やすことが可能となる。これにより、孤立化・孤独化しやすい状況を軽減することが可能になる。
あるいは、グループチャットなどのICTツールを用いて業務状況を、いつでもリアルタイムに共有できる環境を整えることも有効である。電話やメールではコミュニケーションし難くても、チャット等、特に若年層が使い慣れたSNSの感覚で、気軽にコミュニケーションをとる手段を整えることも一案である。
以上、テレワーカーに焦点をあてながら評価不安を解消するポイントについて紹介した。今回は会社側の視点に立った実施策を挙げたが、評価不安の完全な解消には、被評価者自身の意識を変えることもまた同時に重要となる。上位者に見ていてほしいという受動的態度から、見てもらうために自ら報連相を行うなどの能動的態度への意識変革を促すことができれば、なお良いのではないだろうか。
※出典:パーソル研究所 「テレワークにおける 不安感・孤独感に関する定量調査 調査結果」
執筆者
鈴江 遼
(人事戦略研究所 コンサルタント)
大学では人事組織経済学を専攻し、人的資本や行動経済学等の理論を学ぶ。企業内の人事ヒアリング調査を行った経験から、「人事制度の構築・運用のいろはを学び、会社経営の支援がしたい」という思いを持ち、新経営サービスに入社。
常に論理性と一貫性を保ち、本質を突いたアドバイスができるコンサルタントを目指し、日々挑戦している。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
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