海外赴任帰国者の離職を防ぐには
人事制度
企業が海外赴任制度を活用し、グローバル人材を育成していく際に課題として多く挙げられるのが、海外赴任者の帰任後の離職です。赴任先で成果を上げ、将来的には幹部として将来を期待され帰任した矢先に赴任者が離職してしまう、といったケースが中小企業ではよく耳にする話かと思います。今回は帰任後の離職動機や、会社としてどのような対策があるか、といった内容でお話しさせていただきます。
■海外赴任者の離職の動機は何か?
そもそもなぜ、帰任後の離職が後を絶たないのでしょうか。離職理由は様々ですが、次の2点が大きく挙げられるようです。
A.帰国後の配属先やポジションに不満(赴任先ではマネジメント業務も担っていたのに…赴任前と同じ業務・ポジションに逆戻り)がある。
B. 結果的に、帰任後に給与が下落し、勤続へのモチベーションが下がる。(海外での経験は何だったのか…)
これらに共通する問題点は、会社側が海外赴任者の帰任後の処遇や待遇について、明確な指針を打ち出せていないことにあります。結果的に現場サイドと本人との間に、今後描く将来ビジョンに乖離が生じてしまい、結果的に離職に繋がってしまうのです。
■離職を防ぐための手立てはあるか?
先述のように、会社側がとるべき対策として、海外赴任者の帰国後の将来ビジョンとの“ギャップ”を如何に埋めていくか、といった点が重要です。あくまでも一例ですが、
・ 海外赴任者の帰国後のポジションや処遇については、自動的に決定するのでは無く、赴任先の評価や経験を考慮したうえで設定する。
・ また、業務内容についても、異国の地での経験が活かせるような業務は何か、可能であれば帰国前に本人を交えながら決定し、モチベーションを維持できる環境を整えてあげる。
などの対策が必要になってくるかと思います。
前提として、昇進昇格だけを考えると、海外赴任などせず、国内で仕事をしていた方がよっぽど可能性がある、という人事システムであれば、社員はリスクを取ってでも、より挑戦的な海外の舞台で活躍しようとはしません。会社として、海外出向を命じる際には、帰任後にどれだけ魅力的なキャリアを積めるのか、といったところまできちんと整備しておく必要があります。
執筆者
鈴江 遼
(人事戦略研究所 コンサルタント)
大学では人事組織経済学を専攻し、人的資本や行動経済学等の理論を学ぶ。企業内の人事ヒアリング調査を行った経験から、「人事制度の構築・運用のいろはを学び、会社経営の支援がしたい」という思いを持ち、新経営サービスに入社。
常に論理性と一貫性を保ち、本質を突いたアドバイスができるコンサルタントを目指し、日々挑戦している。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
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