■社員教育の費用対効果を上げるには
高い賃上げが可能な会社づくりを行う④(ヒトと組織の戦略に『パーパス』を活用する⑱)

今回は社員教育の費用対効果を高めるための重要なポイントについて解説します。

 

1.習得させたいテーマを選定、決定し、「一貫性」を持って取り組む

2.反復訓練・分散学習のしくみを組み込む

3.「70:20:10モデル」(ロミンガーの法則)を意識した教育(自身の業務内容、組織の業務内容と連動させる)を実施する

4.教育効果を測定する(人事制度によって教育効果を測定できるしくみを組み込む)

5.組織の職種別・階層別の理想の人材配置計画を設定し、計画実現のための教育を上記1~4に基づいて中長期的に実践する

 

1.習得させたいテーマを選定、決定し、「一貫性」を持って取り組む

教育・訓練において、「一貫性」を機能させることは非常に重要なポイントとなります。しかし、このポイントを理解されていないまま社員教育を実施されている企業が意外と少なくないと実感しています。だからこそ、「場当たり的」に教育を実施しないことが費用対効果を高めるために大切です。

コンサルティングの現場でも「自社は社員教育には比較的費用をかけているにも関わらず、あまり教育効果が上がっていないのは何故だろうか?」というお悩みに出会うこともしばしばあります。
そのような企業を分析していくと、教育研修の回数は多いが実施内容や方針に「一貫性」がなく「場当たり的」に教育を実施していることが多くみられます。

例えば、ある企業では毎年、新任管理者に対して、外部講師を招いた管理者研修を実施していました。
しかしながら、長年、管理者教育を実施しているにも関わらず、現場の管理者の指導方針や方法論などのバラツキが解消されず、部下からは「うちの会社は管理者によって言うことも違えば、求めてくる基準もバラバラで何を信用したら良いかわからない。」という不満が多くあがっていました。
結果として、この企業では「管理者の言うことは、どうせ人によってバラバラだから、その場だけ適当に聞いたふりをしておけばよい。」といった組織風土が蔓延し、一般社員の見識もバラバラな組織となっていました。
更に調査し、過去の教育プログラムと受講者へのヒアリングを実施したところ、ある年の管理者は「部下を甘やかすのではなく、しっかり叱ることの大切さ」をメインテーマとした研修を受講し、翌年の管理者は「部下を褒めることの大切さ」をメインテーマとした研修を受講していました。
背景には、その時々で話題になったテーマやマスコミで取り上げられた有名講師を外部講師として招聘してきたため、個別の研修内容は充実していても、企業全体としての一貫性を欠く教育実施となっており、受講者=管理者の見識もバラバラになってしまっていることが見えてきました。
このようなパターンに陥ってしまうと、人材育成や社員教育の実施が単なる消化試合のようになってしまい、社員も「やらされ感」をもつようになりがちです。その結果、教育効果も上がらなかったり、場合によっては組織秩序の混乱や社員モチベーション低下の要因になってしまうこともあります。

組織は多くの個人が集まった集団である以上、放っておくと考え方や行動、常識レベルもバラバラとなってしまいます。それ故、自社にとって優先して揃えるべき常識や基準、習得させたい内容を整理した上で、「一貫性」にもとづいて教育内容を決定し、実際の教育研修を行うべきです。
例えば、自社の管理者層に対し、「まずは全員共通してこのような知識や見識を習得させたい。」ということを整理して、研修テーマや内容を決めましましょう。
さらに、1回の研修では理解・習得できることにも限りがありますので、学んだことに対して繰り返し反復訓練を行い、習得させることが大切です。
自社として押さえておきたい「基本」が組織の中で構築された上で、応用的な研修に進む方が効果的です。

 

2.反復訓練・分散学習のしくみを組み込む

エビングハウスの忘却曲線などでも示されますが、人間は学習内容の大半を数日〜数週間で忘れてしまいやすいものです。そのため、学んだことを本人の中で、定着させて教育効果を上げるためには一過性の教育で終わらせないこと、つまり1度の集合研修などで教育を終わらせないことがポイントです。
具体的な方策としては、研修で学んだことを現場で実践させ、実践後2週間、1ヶ月、3ヶ月、半年といったタイミングで学んだことが実践できているか?をチェックし、復習の機会(フォローアップ研修など)を設けることが有効です。
復習の実施については、簡単なものでも構いません。費用をかけて外部の研修講師を復習のために招聘できなくても結構です。
まず、受講した研修内容について参加者自体が振り返り、状況を確認し合う短時間の社内ワークだけでも効果があります。それも無理な場合は、簡単な小テストや個人単位で出来るミニワークの実施でも良いでしょう。
とにかく何もやらないよりも学んだ内容を思い出し、現在、どの程度実践や活用ができているかを意識することが大切です。

いずれにせよ、丸1日かけた研修を1回だけ実施して、その後のフォローなく教育終了とするよりも、短時間×複数回での反復教育の方が学んだことの定着率が高いことが様々な研究でも明らかとなっています。
当たり前のことだと思われるかもしれませんが、この点をしっかり押さえて教育実施している企業とそうでない企業では人の育つスピードや教育効果に明らかな差が生まれています。

 

3.「70:20:10モデル」(ロミンガーの法則)を意識した教育(自身の業務内容、組織の業務内容と連動させる)を実施する

 
アメリカのリーダーシップ研究機関であるロミンガー社の調査に基づいた人材育成の考え方で、人の成長は業務経験(70%)、上司や同僚など他者からの学びや薫陶(20%)、研修(10%)という比率で学習を進めることが効果的であるというものです。

人事担当者にとってはよく知られた法則の1つだと思いますが、この法則を有効に機能させるまでは至っていない企業もまだまだあるように思います。以下にそのポイントを述べます。

 

(図1)

ロミンガーの法則

この法則を有効に機能させるためには、「研修」と「業務経験」と「上司・同僚などからの学びや薫陶(他者からのフィードバック)」3つの要素を連動させることが重要です。具体的には図2のように3つの要素の連動を研修受講者だけではなく、組織全体の共通認識としていくことが大切です。
 

(図2)

組織全体の共通認識 

 

4.教育効果を測定する(人事制度によって教育効果を測定できるしくみを組み込む)

費用対効果が「わからない」企業の多くは、そもそも効果測定をしていません。
教育に対するアンケートや事後の確認小テストなどは必ず実施しましょう。
こうした効果測定をより体系的に行うために役立つのが、人事評価制度です。学習したことが現場での行動・実践につながっているかを上司が評価し、フィードバックするためにも人事評価制度を連動させることが大切です。
人事評価制度の中に研修で習得させたいこと、レベルアップをしてほしいこと(=昇格要件・基準等と連動)を織り込んだしくみとしていけば、単なる人事評価ではなく、教育研修の効果測定や受講者へのリマインドや復習にも役立つ仕組みとなります。

 
(図3)

格要件・基準等と連動 

 

5.組織の職種別・階層別の理想の人材配置計画を設定し、計画実現のための教育を上記1~4に基づいて中長期的に実践する

(これまで述べてきた「一貫性を持った教育実施」、「学んだことの反復訓練実施」、「70:20:10モデル(ロミンガーの法則)」、「人事評価制度などを活用した教育効果の測定実施」を中長期的に実践し、組織のあるべき姿を実現させる。
 
(図4)

中長期的な実践 

 
(図5※前回のブログから再掲)

職種と役割イメージ 

 
(図6※前回のブログから再掲)

部門ごとの役割責任と人材の適正配置 

 
このように、組織としてのあるべき姿をイメージ共有しながら、計画性と一貫性を持って、教育と評価・フィードバックを重ねて組織開発を実施していくことで、前回のブログでも解説した「組織の階層(=役割等級)ごとに理想の人材配置」を実現しやすくなります。
今回解説した内容は全て「当たり前」の話ではありますが、「当たり前」と思われていることの取り組みの「質」を上げていくことでこれまで以上の成果を得ることができます。是非、取り組んでいただければ幸いです。

 

〈関連小冊子〉
組織改革のための役割&職務等級制度策定ブック
 
〈関連サービス〉
役割等級制度策定コンサルティング

 
<関連リンク>
■賃上げ問題について社員と共有する(その1)
https://jinji.jp/hrblog/14510/

■賃上げ問題について社員と共有する(その2)
https://jinji.jp/hrblog/14854/

■賃上げ問題について社員と共有する(その3)
https://jinji.jp/hrblog/15479/

■高い賃上げが可能な会社づくりを行う(その1)
https://jinji.jp/hrblog/16351/

■高い賃上げが可能な会社づくりを行う(その2)
https://jinji.jp/hrblog/16792/

■高い賃上げが可能な会社づくりを行う(その3)
https://jinji.jp/hrblog/17589/

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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