中小企業が専門職制度の導入を行ううえで検討すべき重要論点

本ブログのサマリー

・専門職制度は、適切に設計・運用することで、専門職人材の能力発揮やパフォーマンス向上につながる可能性がある

・一方、特に中小企業においては、専門職制度を有効に機能させるうえで、特有の難しさが存在する

・専門職制度を導入する前に、少なくとも①事業戦略上の専門性の重要度、②専門職人材の評価可能性、③専門職-管理職の処遇の対等性について検討することを推奨する

 

主に製造業やIT系企業など、専門性の高い人材を有する企業の経営者の方々から、専門職制度の導入是非について、ご相談をよくいただきます。
 
専門職制度は、うまく機能すれば専門職人材のパフォーマンス向上を促すとともに、組織として専門性を高めることができるという点で、有益な制度です。一方で、導入是非の見極めや設計、運用方法を誤ってしまうと、いわゆる「管理職になれなかった人の受け皿」として、本来の意図とそぐわない捉え方をされてしまうリスクもあります。
 
とりわけ中小企業では、「一人が複数の役割を兼務する」、「専門職相当の人材が数名しか存在しない」、「専門職を評価できる人材が社内にいない」といった構造的問題が存在するために、専門職制度の活用には特有の難しさがあります。
 
本稿では、このような中小企業特有の文脈も踏まえながら、中小企業において専門職制度を導入するうえで、あらかじめ検討すべき3つの重要な論点をご紹介します。

 

1. 事業戦略上の専門性の重要度

まず、自社で想定する「専門性」が事業を進めるうえでどの程度重要かを考えてみましょう。そもそも、専門職人材に任せたい業務が年に数回程度しか発生しないのであれば、常設の専門職ポストは不要かもしれません。
 
逆に、研究開発、品質保証、高度なデータ分析、法務、情報セキュリティ、専門営業など競争優位に資する専門業務が継続的に存在し、組織としてこれらの能力を高めることがさらなる価値創造につながるのであれば、制度化する合理性が高まるといえるでしょう。研究開発を例にあげると、その専門性が自社のコア技術の発展に直結し、関連する専門人材を長期的な視点で育成する必要がある場合には、制度化を検討すべきです。
 
なお、上述のとおり、中小企業においては、専門性が高い人材であっても、複数の役割を兼務するケースが往々にして起こりえます。専門性の高い人材はいるものの、「管理業務と専門業務のいずれも担っている」といった実態であれば、専門業務に特化したポストに位置付けて問題ないかを検討する必要があります

 

2. 専門職人材の評価可能性

専門性が高度になるほど、その専門性を持たない人にとっては、対象となる専門性のレベル感を正確に判断できず、評価が困難になるという問題が生じます。中小企業においては、特定分野の専門人材が少数、あるいは1名のみの場合もあり、慎重に検討すべき論点といえるでしょう。専門性を評価する際には、上司だけではなく、同じ専門性を有する社内人材や外部専門家の意見を取り入れる、専門性そのものだけを評価するのではなく、事業貢献(品質の向上、開発期間の短縮など)や組織貢献(人材育成、他者支援など)を主な評価項目とするなど、具体的な評価制度の設計・運用方法も見据えておく必要があります。

 

3. 専門職-管理職の処遇の対等性

社員にとって関心の高い論点の一つが、管理職との処遇差です。この処遇差の設計は、社員に対しての強いメッセージとなるため、あらかじめ方針を検討しておくことを推奨します。例えば、専門職でも、管理職と同等水準の処遇に到達できるよう設計すれば、「マネジメントと専門性で価値を生み出すことは、会社にとって同等に重要である」というメッセージになるでしょう。なお、Hoffmannらによると、専門職人材にとって、専門職コースが管理職コースと同等に扱われていると感じることが、組織に対するコミットメントやキャリアの満足感につながるとされています。

 

以上、本記事では中小企業が専門職制度を導入するうえで検討すべき重要な論点をご紹介しました。制度導入を検討されている企業の方は、導入後に「こんなはずではなかった」と後悔することのないよう、今回ご紹介した論点を事前に検討してみてください。

 

 

参考文献

Hoffmann, P., Hoegl, M., Muethel, M., & Weiss, M. (2016). A contemporary justice perspective on dual ladders for R&D professionals. Journal of Product Innovation Management, 33(5), 589-612.

 

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