自社で作成した評価表に、よくある問題点とは?

WEBや書籍の情報を元に、自社内で人事評価制度をゼロから構築してみたものの、上手に運用できずに困っている、というご相談を頂くことがあります。その原因のひとつに、評価表の設計に問題があるケースがあります。本記事では、よくある問題例を3つ紹介し、その改善アプローチについて解説します。
 
①重要な評価観点が漏れている
人事評価は一般的に、仕事の結果を評価するものとプロセスを評価するものに大別されます。よく前者を「成果・業績評価」、後者を「職務プロセス評価」と呼んだりします。そのうち職務プロセス評価では、社員が目先の結果だけに囚われることなく、継続的に成長して成果を上げていくことができるように、その過程を評価できる項目を設定する必要があります。ただし、WEB上に掲載されている評価表のサンプルには、業務改善や計画推進といった仕事のプロセスを評価するのに適した基本的な項目が含まれていないものも少なくありません。そのまま活用するのではなく、会社として評価すべき観点に漏れがないかを今一度確認しましょう。
 
②評価項目の数が多すぎる
可能な限り業務全体を評価したい…そんな気持ちから、評価項目を20個も30個も設定しているケースがあります。過剰な評価項目数は、評価者への負担が大きく、逆に正しい評価を阻害してしまう可能性もあります。実際に評価する際には、評価項目は10〜15個程度とするのが望ましく、抽出するポイントとしては、重要かつ人によって差がつきやすいものを選択するようにしましょう。
 
③階層ごとに求める評価レベルになっていない
全社員共通で同じ評価項目を設定している場合によく見られる問題です。具体的には、例えば管理職クラスに「来客対応・マナー」といった社会人の基礎的な評価項目を設定していたり、逆に新人クラスに対して「全社最適視点」での行動を求めたりして、本来その階層に求めるレベルとしてそぐわない内容を設定しているケースがあります。その結果、評価の高止まりが発生したり、評価内容と日常業務の実態に乖離があったりして、評価がしづらい・できないといった事態に陥ってしまいます。可能であれば、管理職(部門をまとめるクラス・中間管理職クラス)・非管理職(新人クラス・独り立ちして下級者を指導するクラス)といった具合に、社員の階層レベルを設定し、それに応じた評価項目・評価基準を設定するようにしましょう。
 
いかがでしょうか。上記のような問題は、評価エラーを誘発したり、社員のパフォーマンスを正確に評価できなかったりといった原因になります。評価の納得度を高めるためにも、本稿を参考に、自社の評価表を今一度チェックしていただければと思います。

執筆者

鈴江 遼 
(人事戦略研究所 コンサルタント)

大学では人事組織経済学を専攻し、人的資本や行動経済学等の理論を学ぶ。企業内の人事ヒアリング調査を行った経験から、「人事制度の構築・運用のいろはを学び、会社経営の支援がしたい」という思いを持ち、新経営サービスに入社。
常に論理性と一貫性を保ち、本質を突いたアドバイスができるコンサルタントを目指し、日々挑戦している。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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