働き方改革関連法案が可決
人事制度
働き方改革関連法案が可決しました!
政府が今国会最大のテーマとしてきた働き方改革関連法が、6月29日の参議院本会議で可決され、成立しました。
高度プロフェッショナル制度が話題でしたが、法案の中心は、長時間労働の是正と正規・非正規社員の待遇差解消です。中小企業の場合、前者は2020年4月から、後者は2021年4月からの実施となります。
中小企業とは、製造・建設・運輸業などが資本金3億円以下か常時雇用労働者数(パート社員含む)300人以下、卸売業は同じく1億円以下か100人以下、サービス業は5,000万円以下か100人以下、小売・飲食業は5,000万円以下か50人以下。それを超えると大企業となり、各1年実施が前倒しとなります。
もし大企業に区分されると、長時間労働の是正には、1年足らずしかありません。これまで実質無制限だった残業時間の上限が明確化され、違反した場合には罰則の対象となりますので、残業の多い業界や企業にとっては真剣な取り組みが求められます。
正規・非正規社員の待遇差解消については、具体的な判断事例が、厚生労働省からガイドライン(案ではない)として発表されますので、どこまで踏み込んだ内容になるか。焦点は、既に出ているガイドライン案に対して、基本給や賞与についての追加記載がなされるか、新たに家族手当、住宅手当、退職金などの記述が加わるかどうかという点です。
中小企業は、大手企業の動向や政府からの追加発表などに注意を払いながら、自社での取り組み準備を進めておく必要があります。
【長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等】に関する主な内容
労働時間に関する制度の見直し
・時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定。
・月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置を廃止する。また、使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこととする。
・労働者の健康確保措置の実効性を確保する観点から、労働時間の状況を省令で定める方法により把握しなければならないこととする。
【雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保】に関する主な内容
1.不合理な待遇差を解消するための規定の整備
短時間・有期雇用労働者に関する正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止に関し、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を明確化。併せて有期雇用労働者の均等待遇規定を整備。派遣労働者について、①派遣先の労働者との 均等・均衡待遇、②一定の要件を満たす労使協定による待遇のいずれかを確保することを義務化。また、これらの事項に関するガイドラインの根拠規定を整備。
2.労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明を義務化。
正規・非正規社員の待遇差については、「よく分かる同一労働同一賃金講座1、2」(計30分強)をYouTube上で無料公開していますので、是非ともご覧ください。
執筆者
山口 俊一
(代表取締役社長)
人事コンサルタントとして20年以上の経験をもち、多くの企業の人事・賃金制度改革を支援。
人事戦略研究所を立ち上げ、一部上場企業から中堅・中小企業に至るまで、あらゆる業種・業態の人事制度改革コンサルティングを手掛ける。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
バックナンバー
- 評価者・考課者側のモチベーションを高める必要性
- リスキリングで人材流出の危険?
- 若手重視のベースアップ・賃上げを行う方法(ベースアップ・シミュレーションつき)
- 会計事務所、法律事務所など、士業の人事給与制度について
- 「年収の壁」と家族手当の子ども手当化
- 男女賃金格差は、開示のあった上場企業で約3割。その原因と今後の見通し
- 選択型・時短勤務制度とは ~多様な育児環境への対応~
- コロナ5類引き下げで、人事部・総務部が検討すべきテレワークなどの企業対応
- キーエンスに学ぶ平均年収の引き上げ方
- 先進企業に学ぶ、男女賃金格差の開示・情報公開方法
- 人事部門にエース級人材を配置するメリット
- 上場企業で、役員報酬の明確化が進む
- 70歳雇用義務化? 定年再雇用者にこそ、目標管理を。
- 正社員以外にも、家族手当、賞与、退職金が必要に?
- 「転職クチコミサイト」で、自社の評判をチェック