評価基準の具体化のメリットとその進め方
人事考課(人事評価)
公平な評価とは何か
人事評価に関するお悩みとして、組織として公平な評価ができていない、という話を聞くことがあります。ここでの公平な評価とは、評価者間、あるいは評価者と被評価者の間で、各評価項目における点数判断の基準=評価基準が共有されている状態を指していることが多いです。また、その状態が実現されていないことによって、被評価者の不満といった問題に悩まれているようです。
例えば評価者間で評価基準が共有されていないと、同じ貢献であっても上司により評価の甘辛差がつくということになり、部下の不満の原因になり得ます。また評価者と被評価者の間で評価基準が共有されていないと、特に自己評価が高い社員は上司評価との乖離に納得できず、不満を抱くでしょう。
であれば、5点満点の評価であれば何をすれば3点なのか、どこまでやれば4点となるのか、評価基準を具体的な事象により記述し、評価者・被評価者含め社内に展開することによって、評価基準の共有つまり公平な評価に近づくといえます。
評価基準の具体化に向けて
ではこの評価基準の具体化は、どのように進めればよいのでしょうか。最も簡単な方法としては部門ごとに、各評価者が実施した評価の根拠をお互い開示しあい、記録を集積するというものです。仮に5点満点の評価で2点をつけたのであれば、部下のどのような事象を根拠としたのか?3点となるには何が必要か?4点はどうか?を出し合い、下表のように記載していきます。これを評価の都度集積していくことによって、より有用なものが出来上がります。
1等級の評価基準の例
2点 | 3点 | 4点 | |
【報連相】
上司や先輩に、必要な報連相をタイムリーに実施する |
タイミングの遅れや、内容が事実と異なる場合が2~3回あった
月報や週報でしか法演奏がなく、対面での報連相がなかった …… |
遅滞なく事実の報連相ができていた
メールのCCと口頭でのフォローを適切に使い分けていた …… |
タイミングと報連相の内容が適切で、特に指摘や修正の必要がなかった
…… |
【協調性】
部署内外のメンバーと協調して業務を進める |
協力を依頼された場合、特に理由なく従わないことが2~3度あった
会議の準備への関与が他のメンバーよりも明らかに少なかった …… |
わからないことや困ったことがあったときは周囲に協力を依頼していた
協力を依頼された際は、自分の仕事に支障がない範囲で応じていた(自分の業務を優先して依頼を断ることはある) …… |
担当外の外線電話も率先してとっていた
協力依頼には常に率先して応えながらも、自分の業務に支障をきたすことがなかった …… |
…… | …… | …… | …… |
この時にポイントになるのが以下の2点です。まずなるべく客観的に確認できる内容や表現に絞り、「やる気が見られた」「頑張っていた」等は避けるということです。次に5点満点であれば、2点・3点・4点の基準を作成する、ということです。これらを通じて、例えばなぜ4点(以上)ではないのか、そうなるためにどうすればよいのか、共有することが可能となります。
評価基準を具体化することにより、人材育成への活用も期待できます。今後は期末の評価時期に時間を確保し、ぜひ取り組んでいただければと思います。
執筆者
田中 宏明
(人事戦略研究所 コンサルタント)
前職のシンクタンクでは社員モチベーションの調査研究に従事。数多くのクライアントと接するなかで、社員の意識改善、さらには経営課題の解決において人事制度が果たす役割の重要性を実感し、新経営サービスに入社。 個人が持てる力を最大限発揮できる組織づくりに繋がる人事制度の策定・改善を支援している。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
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