新しい人事制度の理解を促すための工夫 ~理解度チェックテストとロールプレイ~
人事制度
せっかく苦労して作った人事制度も、意図した通りに運用されなければ、期待していた効果は得られません。また人事制度の運用の要となるのは、実際の評価や昇格の判断を行う現場の管理職です。であれば人事制度の内容だけではなく、その背後にある意図や目的も含めて、なるべく早い段階で現場の管理職に理解してもらうことが重要です。
ところが、説明資料を配布し説明会を実施したところで、現場に戻ってからも説明の内容を正確に覚えている管理職がどれだけいるでしょうか。あるいは日々の業務に忙殺される中で、それを覚えていられる管理職はどれだけいるでしょうか。筆者が人事制度の改定や導入を支援してきた経験を踏まえると、あまり多くはないというのが実態のようです。
であれば、人事制度の意図や目的を含めた管理職の理解に向けて、どのように取り組めばよいでしょうか。ここでは新しい人事制度の導入時に、説明資料の配布や説明会の開催以外に実施できる工夫を、2点紹介します。
1:人事制度に関する理解度チェックテストを行う
1点目は人事制度に関する理解度チェックテストです。説明会の実施後、日を置いて管理職に集まってもらい、人事制度に関する問題を解いてもらいます。出題の仕方のイメージを以下に掲載しますが、このような穴埋めの形式がやりやすいと思います。実際に説いてもらうと、筆者の経験では全問正解できる方はごく一握りで、中には一問も解けない方もいらっしゃいます。回答解説の後、改めて制度を説明すると、不思議なことに制度説明会の時とは目の色を変えて、食い入るように聞いてもらえるはずです。
実施におけるポイントとしては、制度内容を知らないことに対する危機感をしっかりと持たせることです。例えば問題を開始する前に、「管理職である皆さんには当然理解できていることかと思いますが……」のような伝え方をするのも有効でしょう。
2:説明のロールプレイを行う
これだけでも十分かと思いますが、より理解を深めたいのであれば、2点目として述べる新入社員に対する説明のロールプレイを実施するのがおすすめです。自分の言葉で説明することが理解を促す、ということはよくいわれています。そこで2人1組になってもらい、片方が新入社員の役を演じて、もう片方がその上司役として人事制度について説明してもらいます。その際、人事評価や昇給の仕組みにとどまらないよう、会社が期待する人材像や、それに向けたキャリアステップといった制度の意図や目的にも言及してもらうようにするとよいでしょう。
制度の導入を見据えているのであれば、ぜひ参考になさってください。
執筆者
田中 宏明
(人事戦略研究所 コンサルタント)
前職のシンクタンクでは社員モチベーションの調査研究に従事。数多くのクライアントと接するなかで、社員の意識改善、さらには経営課題の解決において人事制度が果たす役割の重要性を実感し、新経営サービスに入社。 個人が持てる力を最大限発揮できる組織づくりに繋がる人事制度の策定・改善を支援している。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
バックナンバー
- 評価基準の具体化のメリットとその進め方
- 若手社員を定着させるために、昇格制度でできる工夫
- 人事評価は加点主義で実施すべきか否か?
- 専門性の高い業務がない場合の 専門職制度(複線型人事制度)の設計
- どのように賃金を引き上げればよいか? ~最低賃金の引き上げや採用競争に向けて~
- 社員の自己研鑽に向けた非金銭的な支援について
- 家族手当と住宅手当の採用企業が増加傾向?トレンドの背景を考える
- 人事異動を促すために必要となる具体的な施策2点
- 異動がないと業務のトラブルや退職につながる!?
- コア人材の獲得に向けて給与水準を職種別に設定する
- メッセージに沿った人事施策・人事制度の見直し
- 人事評価を通じて企業理念や行動指針の浸透を図る
- 評価しきれない社員の頑張りにどう報いるのか?
- 現役世代のルールに準じた、再雇用時の月給の決定について
- 昇格条件の厳格化を通じた人件費高騰の回避