人員分析を通じて組織の将来を考える②
分析・診断
前回は、中期経営計画と対比させながら、人事に関する中期計画の重要性について紹介しました。今回は人事計画を立てるための、人員分析の3つのステップについて述べていきます。
<人事計画を立てるための人員分析、3つのステップ>
①現状の人員構造の把握
②経営計画を達成するために望ましい人員の検討(=あるべき人員)
③現状の人員と、あるべき人員とのギャップ分析
まず①現状の人員構造の把握に向けて、人員分析を実施します。これは組織の人員構成を定量的に把握するためによく用いられる、一般的な手法です。性別や年齢、役職や勤続年数といった切り口から集計した人員の分布に基づき、課題や将来的なリスクを検討します。例えば役職者に高齢層が多いのであれば、定年退職や役職定年による交代を見据えた後任の育成が、組織課題として明確となるでしょう。
しかし人事計画の策定に向けては、人員構造の把握だけでは不十分です。というのは、人事計画は前回説明した通り、経営計画の達成において望ましい人員の実現に向けた課題解決を目的としているからです。であれば、現状の人員で経営計画は達成できるのか?できないのであれば、どのような人員に過不足があるのか?等の観点からも分析・検討を行うことが必要不可欠です。
例えば、経営計画では営業の強化がうたわれているが、マンパワーは充足しているのか?など、経営計画に対する人員の過不足を量的に検討することが必要です。あるいは新しい事業や製品を立ち上げるうえでは、どのようなスキルを持った人材を揃えていくべきか?など、人員の過不足を質的に検討することも有用です。このように、人員分析を通じた実態の把握にくわえて、上記の②経営計画を達成するために望ましい人員の検討、および③現状の人員と、あるべき人員とのギャップ分析が必要となるのです。
まずはこれらのステップをしっかりと押さえていくことで、経営計画の達成に資する施策の検討がしやすくなります。次回は上記の②に含まれる、「あるべき人員」を検討するうえで考慮すべきいくつかの観点について紹介したいと思います。
執筆者
田中 宏明
(人事戦略研究所 コンサルタント)
前職のシンクタンクでは社員モチベーションの調査研究に従事。数多くのクライアントと接するなかで、社員の意識改善、さらには経営課題の解決において人事制度が果たす役割の重要性を実感し、新経営サービスに入社。 個人が持てる力を最大限発揮できる組織づくりに繋がる人事制度の策定・改善を支援している。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
バックナンバー
- 新しい人事制度の理解を促すための工夫 ~理解度チェックテストとロールプレイ~
- 若手社員を定着させるために、昇格制度でできる工夫
- 人事評価は加点主義で実施すべきか否か?
- 専門性の高い業務がない場合の 専門職制度(複線型人事制度)の設計
- どのように賃金を引き上げればよいか? ~最低賃金の引き上げや採用競争に向けて~
- 社員の自己研鑽に向けた非金銭的な支援について
- 家族手当と住宅手当の採用企業が増加傾向?トレンドの背景を考える
- 人事異動を促すために必要となる具体的な施策2点
- 異動がないと業務のトラブルや退職につながる!?
- コア人材の獲得に向けて給与水準を職種別に設定する
- メッセージに沿った人事施策・人事制度の見直し
- 人事評価を通じて企業理念や行動指針の浸透を図る
- 評価しきれない社員の頑張りにどう報いるのか?
- 現役世代のルールに準じた、再雇用時の月給の決定について
- 昇格条件の厳格化を通じた人件費高騰の回避