専門性の高い業務がない場合の 専門職制度(複線型人事制度)の設計
人事制度
先日、あるお客様からこのような悩みを相談いただきました。「製造職ではマネジメント以外のキャリアパスをどう考えればいいのだろうか」ということです。その会社では、他の多くの会社と同様、一定の段階を超えると課長や部長といった上位の役職へ昇進することによってキャリアアップする仕組みとなっています。見方を変えると、限られたポストが埋まっていた場合、キャリアアップの道は閉ざされてしまいます。そのため、優秀な社員であってもタイミング次第では非管理職の昇格上限から昇格できずに長く滞留し、将来のキャリアパスを描けないままやる気を失ってしまう、ということが生じていました。
上記の課題解決のためには、一定段階以上のキャリアパスを複線化することにより対応する方法が一般的です。具体的には、高度な技能やスキルを身に着けるとともに、その活用を通じた貢献を期待するコースを設定することで、役職に就かずとも管理職相当の等級への昇格を可能とするものです。
その高度専門職の設定に際しては、業務の専門性に着目することがほとんどでしょう。とはいえ、業務自体以外の専門職のあり方を検討することが効果的な場合もあります。
例えば冒頭のケースでは、専門性の高い業務が存在しないことから、製造職での高度専門職の設定を半ば諦めていました。あわせてよく話を聞いてみると、製造職の下位等級者の育成が進んでいないという課題もありました。課長が忙しくて現場にいけないがために、部下の育成を含めた人材マネジメントに十分な労力を割けていないとのことです。であれば、コーチング等の育成スキルを身に着けてそれを活用し、課長と連携しながらあらゆる社員を早期に育て上げるという人材が求められるのでないか。そのような考え方から、人材育成に関する高度専門職のキャリアパスを設定しました。
昨今、人材育成は多くの会社で重要な経営課題となっています。その対策として、業務ではなく育成に関する高度専門職のあり方を制度化することが効果的な場合もあります。特に業務自体に関する専門職を設定できないのであれば、マネジメント以外のキャリアパスを設定するという意味でも重要となります。同様の課題を持たれているのであれば、ぜひ参考になさってください。
執筆者
田中 宏明
(人事戦略研究所 コンサルタント)
前職のシンクタンクでは社員モチベーションの調査研究に従事。数多くのクライアントと接するなかで、社員の意識改善、さらには経営課題の解決において人事制度が果たす役割の重要性を実感し、新経営サービスに入社。 個人が持てる力を最大限発揮できる組織づくりに繋がる人事制度の策定・改善を支援している。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
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