役職定年者は実務に戻すべきか?~元役職者の活用に関する事例紹介~

部長や本部長にまで昇進しても、筆者の経験上、役職定年後は実務に戻るという運用をされている会社が大半です。しかしながら、そこまで上位の役職に上り詰めた優秀な社員を実務に戻すことは、果たして適切なのでしょうか。このような疑問を持ち、実際に元役職者の強みを活かして新たな役割を付与することで、マネジメントや実務とは異なる形で組織の問題解決に寄与した事例を紹介します。
 
1:豊富な商品知識を活用
ある商社では取扱商品の多さを強みとしていた一方で、営業担当がそれらすべての商品の知識を習得するのに時間がかかることが問題となっていました。顧客からの問い合わせやトラブルの対応が後手に回ってしまうことが頻発しており、とはいえ営業所が全国に分散していることで知識を共有する手段も限られていました。
そこで営業部長が役職定年を迎えた後、その豊富な商品知識を活用して、社内の営業担当からの商品に関する様々な問い合わせに即時対応する、といった役割を担うこととなりました。
 
2:メンター機能として活躍
また別のメーカーでは人員不足により各課長がプレイヤー業務に忙殺され、特に若手メンバーに対する日頃の業務状況の把握をはじめとする細かなマネジメントが十分にできておらず、それが原因と推察される離職も発生しているという問題がありました。
そこで人事部長が役職定年を迎えた後、それまでの若手社員との接点を活用したメンターとして、上司である課長に替わって若手メンバーとの個別面談を定期的に実施することを通じて、職場でのキャリア形成をサポートするという役割を担うことになりました。
 
このように元役職者の持つ強みを活用して新たな役割を付与することにより、組織の問題解決に寄与できる可能性があります。
 
留意すべき点は以下の2点です。
ひとつめは、上記のような新たな役割に、すぐに対応することは難しいという点です。例えば先に述べた事例でいえば、営業部長は現場からの問い合わせに対して、上から目線ではなく対等な立場として、丁寧に聞き取り根気強く伝えるといったコミュニケーションのスキルを、役職定年後に改めて学んでいました。役職定年後、新たな役割を任せるのに先立ち、一定の準備期間を想定しておくとよいでしょう。
ふたつめは、元役職者に付与できる新たな役割はあまり多くはない、という点です。実務に戻るということを原則とし、組織の問題解決と本人の強みが合致した場合に例外的に新たな役割を付与する、といった運用が多くの組織に適しているように思います。
 
これらの点に留意しつつ、将来的に役職定年を迎えるであろう役職者を対象として、組織の問題解決の観点から活躍の可能性を考えてみてはいかがでしょうか。

執筆者

田中 宏明 
(人事戦略研究所 シニアコンサルタント)

前職のシンクタンクでは社員モチベーションの調査研究に従事。数多くのクライアントと接するなかで、社員の意識改善、さらには経営課題の解決において人事制度が果たす役割の重要性を実感し、新経営サービスに入社。 個人が持てる力を最大限発揮できる組織づくりに繋がる人事制度の策定・改善を支援している。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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