企業年金の将来像(3) 「相互扶助」と「自助努力」

企業年金の将来ということで、3回目は「相互扶助」と「自助努力」というテーマで考えてみたいと思います。そもそも「年金」というのは、毎年定期的・継続的に給付される金銭のことを総称するのですが、社会的な側面においては、税制優遇措置や生活保護等と同じく、自力でフルに働くことが難しく収入が乏しい場合に給付される生活保障の一つとされています。具体的には、「老齢年金」(高齢で働けない)、「障害年金」(障害があり働けない)、「遺族年金」(大黒柱が亡くなり収入が少ない)といったケースです。これらはいわば社会全体がお互いに支えあう「相互扶助」の精神のもとでの年金制度といえるでしょう。
 
では企業年金はどうでしょうか。
企業年金は、もともと退職金制度から端を発しており、その性質は「相互扶助」ではなく、企業からの報酬の一部として運営されることには異論がないと思います。しかし、最近は企業年金の中で「自助努力」というキーワードが言われるようになりました。特に確定拠出年金の基本コンセプトは、将来の受取り額を自らの判断で増やす「自助努力」意識を植え付け、努力に向わせることにあります。
 
負担と給付のあり方をもとに、こうしたコンセプトを年金の関連諸制度ごとに整理すると、次のようになりました。
 
① 公的年金(国民年金、厚生年金等):相互扶助
② 確定給付企業年金:企業からの報酬の一部(福利厚生面含む)
③ 確定拠出年金:企業からの報酬の一部+自助努力
 
前回も書きましたが、これから日本は少子高齢社会にますます拍車がかかり、老後の生活はますます厳しくなることが予想されます。そうした社会に向う中で、相互扶助システムの限界を補う意味で、確定拠出年金も含めた自助努力が必要になることでしょう。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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