キャリアパスの設定方法 (3) ルートの設定

マネジメントコース
最もオーソドックスにイメージされるルートだが、各社ごとに定義をはっきりさせる必要がある。単に、プレイヤーとして実力がある人がマネジメントに上がる場合、昇格時の納得性は高いが、長い目で見ると成功しないことが多い。
本来のマネジメントは、「自分を殺してでも人を活かす」という発想・覚悟が必要である。どうしてもプレイヤーの意識が強い人はなかなかそうした発想になりにくく、意図的でないにせよ部下を見下す、自信をなくさせる、という結果が多い。中小企業では、管理職とプレイヤーの分業ができないことが多いが、プレイングマネージャーでもこの本質を理解させ、あくまで主眼を「マネジメント」に置かせるための定義づけ、意識付け、教育機会の付与が不可欠である。

スタッフコース
ここでのスタッフとは、いわゆる「専門職スタッフ」を意識してもらって良い。業種によっては研究職・クリエイター職として、単独で高い付加価値を市場および社内で発揮する人である。ここでも、「スタッフ=マネジメントから外れた人」というネガティブな印象でなく、前向きな意味合いを定義したい。もしもそれに値する人材が居ない場合には、安易にスタッフコースに流れる人も増えるため、あえて設定しないほうが良い。

パートナーコース
スタッフコースの発展形ともいえるが、社外における専門職、すなわち「独立コース」を設けるのも一つである。協業でモノを作るメーカーなどでは難しいが、個人の裁量がある程度認められる業種においては、アントレプレナー精神を持った人達と会社との「ギブアンドテイク」の関係を保ちながら、お互いの発展を両立させることができる。

先日も、専門の制作スタッフを多く抱えるメディア関連企業の方と話す機会があったが、その会社では一般的な人事制度(終身雇用を前提とした所謂日本的な制度)を導入したところ、社員の定着率は良くなったものの、「外から仕事を取ってくる」というようなアントレプレナー精神を持った社員が減ってきた、という現象が見られるそうだ。場合によっては、社員に安定を保証する人事制度は「諸刃の剣」となり、社員一人ひとりの成長可能性を阻害することもありうる。
独立する力を持った社員とは、単なる「喧嘩別れ」をしてしまうのでなく、パートナー契約を継続したり、独立時に金銭的・業務的支援を保証するコースを設けておくなどし、共存共栄の道を残しておくことが賢明といえる。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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