適格年金移行先の選択眼(3) 確定拠出年金

適格年金の移行先の3番目は、確定拠出年金(日本版401k、あるいはDC制度)です。
 
(1)確定拠出年金への移行のポイント
確定拠出年金(通称DC)は、前回の確定給付型年金と違い、拠出責任は会社が負いますが、運用責任は従業員が自ら負います。そこが「自己責任の制度」と言われるゆえんです。
 
①給付は3種類、そのうち老齢給付は60歳以降
 確定拠出年金の給付は、1)老齢給付 2)障害給付 3)遺族給付 の3種類で、確定給付にみられる「中途脱退一時金」のような途中退職で支給するルールはありません。最も一般的な老齢給付は60歳以降の受取となります。
 
②自己責任による運用
DCの運用は従業員自らが責任を負います。具体的には、会社が規約で定める複数の商品(最低3本、そのうち1本は元本保証型とされる)の中から、投資対象を選ぶことで運用を行います。毎月の掛金を複数の商品に振り分けることも可能ですし、これまで投資してきた商品による資産を途中で解約し別の商品に預けかえることも可能です。ただし、投資対象となる投資信託は、日々値動きがありますので、タイミングを間違えたり、資産配分を間違えると、元本を割るリスクも発生します。
 
③転職先に持ち運びができる
①では原則として60歳以降の受取ができないこととなっています。では途中でその会社を退職した場合にはどうなるのか――転職先に同じ制度があれば資産を持ち運ぶことが可能です。なくても、自分で掛金を拠出し、資産を増やすこともできます。DC制度はあくまでも老後の資産形成を目的としたものですので、自分のプランに合わせて資産形成をしていきたいものです。
 
(2)確定拠出年金への移行に際して考えるべきこと
DCは拠出時点で本人資産という取り扱いがなされますので、退職の事由によって金額の増減はできません。すなわち会社都合も自己都合もすでに拠出した分のみとなります。したがって、これまでの退職金制度に会社都合・自己都合という複数事由があった場合には、DCをどの範囲で適用するかを検討する必要があります。
 
また適年からの移行の場合は、適年資産を個人別に分配計算し、DCの個人口座に移し替えることとなりますので、移行時点での各人の既得権と照らし合わせて適性な金額かどうかの検証が必要です。この部分は非常に専門的になりますので、一度ご相談ください。 なおDCが「自己責任の制度」とはいっても、多くの従業員は投資になれていないケースが多く、また制度をよく理解していない従業員も多いのが実態です。そこで会社の責任として導入後だけでなく状況をみながらの継続教育が必要となるでしょう。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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