退職金制度改革の実践 その2 ~退職金制度の「実力主義化」~

従来の年功型退職金制度
次に退職金の「実力主義化」を解説します。
 
人事制度が年功から実力主義(成果、役割)にもとづく処遇基準となる一方、 退職金制度は相変わらず年功序列のままという企業は多く存在します。 その代表例は、「最終給与比例方式」(または「最終給与連動方式」)と呼ばれる方法で、次の基本的なしくみをとっています。
 
退職金支給額 = 退職時の基本給 × 勤続年数別支給率 × 退職事由別係数
 
なお、企業によっては「退職時の基本給」のところを「基本給+役職手当」「基本給の80%」としたりする例もあります。 また、退職事由別係数とは、一般的に会社都合(定年都合含む)と自己都合を併記します。 そこで「勤続年数別支給率×退職事由別係数」についても、すでに会社都合・自己都合の支給率を掛けてしまって、 会社都合支給率・自己都合支給率という形で規程に記載されているところも少なくありません。
 
従来型の問題点
では、従来型の制度にはどんな問題点が含まれているのでしょうか。 会社都合・自己都合は度外視するとして、従来型の退職金制度によれば、 〔タテ:基本給〕〔ヨコ:勤続年数別支給率〕という長方形の、ちょうど面積にあたる部分が退職金です。
 
(計算例)
 
1年目  基本給20万 × 支給率1.0 = 20.0万円
 
2年目  基本給21万 × 支給率1.2 = 25.2万円
 
3年目  基本給22万 × 支給率1.5 = 33.0万円
 
4年目  基本給23万 × 支給率2.0 = 46.0万円
 
(続く)
 
上記の制度の問題点は次の3点です。
 
問題点1 かつては給与アップモデルが通用し、「最終給与」が本人の実力を象徴していたが、 現在は本人の働きぶりが「最終給与」に象徴されなくなってきている
 
問題点2 基本給の伸びが鈍化すると、勤続年数の伸びによって決まる要素が高まる
 
問題点3 逆に基本給のアップは、そのまま退職金債務のアップを招くこととなり、経営上の負債リスクが高まる

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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