若手社員への効果的なフィードバック方法

若手社員の意識や行動を変え、即戦力化するために必要な指導とは、大きくいえば「いかに効果的なフィードバックができるか」です。

フィードバックとは、行動や結果に対して評価することですが、言い換えると、よいことは褒める、悪いことは同じことを繰り返さないように注意する、叱ることです。

本コラムでは、効果的なフィードバックを行う際に必要な5つの観点について解説します。

 

1.フィードバックはSBI(S:状況、B:行動、I:影響)で

まず、フィードバックする際に絶対に押さえなければならない点は、「事実関係に基づいたフィードバック」、これに尽きます。やってしまいがちなのが、周囲から聞いた簡単な情報や日頃の印象だけでフィードバックしてしまうというケースです。

しかし事実確認ができていない、あるいは不十分な情報でフィードバックしても、当然ながら的を射たフィードバックはできず、若手社員は「上司の機嫌が悪いから叱られた」「普段の印象をもとに“決めつけ”で叱られた」という強い不満と不信感を持ちます。

フィードバックをする前に、「どのような状況のときに、若手社員がどのように振る舞い、その行動の結果、どのような影響をもたらしたのか」というSBIによる事実確認を行なったうえで、「できる限り具体的に、若手社員の問題点を事実に基づいて指摘するフィードバック」を心がけることが重要です。

 

2.「YOUメッセージ」ではなく、「Iメッセージ」で伝える

相手の心を動かすフィードバックをするためには、伝え方も重要です。

伝え方のポイントとしては、上司・先輩社員が感じた主観的な事実を伝えることが第一に挙げられます。つまり若手社員の行動や立ち振る舞いが、上司や先輩社員にはどのように映っているのかを伝えてあげるのです。

たとえば以下のようなイメージです。

 

〔YOUメッセージ〕

 〇〇さんは仕事が速いね

  ↓

〔Iメッセージ〕

 〇〇さんが仕事を早く進めてくれたお蔭で、私の仕事もスムーズに済んで助かった!

 

〔YOUメッセージ〕

 挨拶が元気だね

  ↓

〔Iメッセージ〕

 〇〇さんが元気な挨拶をしてくれると、私まで元気になるよ!

 

3.「結果」の承認よりも「プロセス」の承認

誰でも見ればわかる成果は、放っておいても周囲が承認するものですが、大事なのは成果を出すまでの苦労を観察して、承認することです。

当然ながら人間の成長スピードには個人差があります。1回聞いたらすぐにできるようになる人もいれば、3回言われて初めてできるようになる人もいるでしょう。すぐにできる人はいいですが、3回言われてできる人には、できるまでのプロセスを承認してあげることが必要です。

上司・先輩社員はプロセスに注目し、部下のモチベーション向上を図ることを心がけましょう。

 

4.フィードバック後の行動を観察する

フィードバックは「して終わり」ではなく、フィードバックした後の行動もきちんと観察することで、その必要十分条件が満たされます。

指導した内容に対して、ちゃんと取り組んでいるかを観察し、取り組んでいればそのプロセスを承認することで、部下は「自分のことをちゃんと見てくれている」と認識し、上司との良好な関係を構築することに積極的になります。

 

5.言葉の定義を整える

言葉というものは、人によってさまざまな解釈があります。そのため、上司・先輩が発した言葉と、若手社員が受け取った言葉の定義や目標レベルをすり合わせておくことが重要です。

 

上司・先輩が、以上のポイントを押さえたフィードバックを実践することができれば、フィードバックを通じた教育へとつながり、若手社員を定着させ、成長を加速させることとなります。

なお、少し余談になりますが、「フィードバック」という言葉の語源は、食べ物・栄養という意味の「Feed」からきているそうです。これは、上司・先輩が適切なフィードバックを行なうことが、若手社員にとっての“成長の糧”となる、と捉えることができます。ぜひ、上記の観点を意識したフィードバックを実践してみてください。

執筆者

大園 羅文 
(人材開発・経営支援部 コンサルタント)

「採用・定着コンサルタント」として、中堅・中小企業を対象とした人材採用支援(新卒・中途)、若手人材の定着・即戦力化支援、人事制度の構築・運用支援に従事。
特に、『若手人材の採用・定着力の強化』を得意テーマとしており、中小企業独自の問題に対する支援を通じて、“欲しい人材を採用・定着させる企業づくり”をテーマに掲げている。
「成功事例で分かる 小さな会社の採用・育成・定着の教科書」(日本実業出版社) 著者

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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