採用戦略とは? 戦略の立て方やメリットを紹介

Ⅰ.採用戦略とは?

多くの中小企業は、「募集をしても応募が集まらない」「色々な採用手法を試すもうまくいかない」「選考・内定辞退が多く発生している」「求める人材からの応募が少ない」といった悩みを抱えています。

売り手市場の進行や採用施策の多様化・複雑化が進む現代において、中小企業が人材獲得競争を勝ち抜くためには、求人原稿の修正や面接方法の見直しなどのマイナーチェンジだけでなく、採用戦略の見直し・策定が必要となっています。

採用戦略とは、自社の採用ターゲットの獲得に向けて、今後の採用課題と取り組み事項をもとに、いつ・誰が・何を・どのような手段で活動していくのかを具体化したものです。

これにより、人材採用に時間・コストを割くことが難しい中小企業でも、「採用戦略」という方針のもと、採用PDCAを高速に回しながら、計画的に勝つべくして勝つ採用活動を推進することができます。

 

Ⅱ.採用戦略を立てるメリット

中小企業が採用戦略を策定するメリットは、以下の3点です。

 

【メリット❶】自社の勝ちパターンが分かる

欲しい人材を採用するための採用手法や広報手段(媒体・原稿)等、自社のあるべき採用活動を具体化することができます。

 

【メリット❷】次の打ち手が分かる

採用活動の総点検を通じて、採用上の問題点を可視化し、採用課題解決に向けた今後の取り組みを具体化する事ができます。

 

【メリット❸】欲しい時に・欲しい人材を・欲しい人数、採用できる

自社の勝ちパターンを確立し、自社の採用課題を解決することで欲しい時に、欲しい人材を、欲しい人数だけ採用できます。

 

つまり、採用戦略を策定することで、ムダな時間・コストを掛けず、効率的・効果的な採用活動を展開できると同時に、必要な時に・求める人材を・欲しい人数、採用できるようになることが、採用戦略の最大のメリットと言えます。

 

Ⅲ.採用戦略の立て方

採用戦略は次の4つのSTEPで策定します。

 

【STEP1】企業ビジョンの整理および採用目標人数・求める人材像の設定

人材採用は企業の成長・発展のための1つの手段です。そのため、どのような人材を、いつまでに、何名採用すべきかを考える上では、今後の経営方針や事業展開等のビジョンを整理する必要があります。 

そして、ビジョンが整理できたら、そのビジョンの実現に必要な追加人員(=採用目標人数)について、現状の部門別の人員や年齢構成を整理の上、将来の人員予測シミュレーションを行うことで算出します。具体的には、社員が仮に誰も離職することなく、数年後を迎えた場合、部門別にどのような年齢構成の変化があるかを検証することで、将来的に手薄になる年代や人数を大まかに特定することができます。

最後に、ビジョンの実現に向け、社員に求めたい能力・スキルを整理し、各部門・職種における求める人材を設定します。求める人材は、年齢や居住地、保有資格や経験等の定量的な観点だけでなく、保有能力やスキル、志向性や価値観等のマインドといった定性的な観点もあわせて具体化を図ります。

 

【STEP2】採用上の問題点と課題の洗い出し

採用戦略を策定するためには、現状の採用活動が欲しい人材を採用するための効果的な活動となっているかを総点検し、採用課題や今後の取り組みを具体化していく必要があります。採用活動を総点検する際には、マーケティングフレームの1つであるAISASフレームを活用すると良いでしょう。 

 

 〇Attention:認知(表示回数・PV数・会員属性等)
 〇Interest:興味(クリック率・コンバージョン率等)
 〇Search:検索(採用サイトの閲覧数・口コミサイトの評価等)
 〇Action:行動(面接の歩留まり・内定承諾率等)
 〇Share:共有(社員からの人材紹介人数等)

 

このフレームを用いて、どの時点で求職者が離脱しているのか、また、なぜ離脱してしまったのかを整理し、特にどのフェーズの問題点を解決すれば最短ルートで採用力を強化できるのかを検討することで、解決すべき採用課題や今後の取り組みを具体化することができます。

 

【STEP3】採用力強化方針と重点課題の設定

解決すべき採用課題や今後の取り組みを踏まえ、今後の採用活動におけるコンセプト(採用力強化方針)と、特に注力して取り組むべき重点課題を設定します。なお、時間・コストの面で制約のある中小企業の場合、洗い出した課題を一気に進めるのは難しいため、各採用課題の緊急度と重要度を整理し、優先順位を付けたうえで、毎年の重点課題を設定します。これにより、ムリなく・着実に採用PDCAを回すことができます。

 

【STEP4】採用KPIと推進スケジュールの策定

最後に、採用活動がスムーズに推進できているかをチェックするための採用KPI(応募率・面接合格率・辞退率等)の設定や、採用PDCAを回すための推進スケジュールを策定し、いつ・誰が・何を実施するのかを具体化します。

 
以上の内容について検討することで、今後自社が採用力強化に向けて取り組むべきことが明文化され、採用戦略という自社なりの勝ちパターンを確立することができます。

 

Ⅳ.売り手市場の“今”だからこそ、採用活動の抜本的改革を!

■採用競争力診断サービスのご案内

弊社では、「応募が集まらない」「応募が来ても求める人材の採用ができない」「採用した社員がすぐ辞めている」等、採用活動上の問題を抱えているものの、改善すべきボトルネックが分からない中小企業向けのサービスとして採用競争力診断を実施しています。本診断では、人材採用・定着における問題点とその発生原因、そして採用・定着力の強化に向けた、具体的な課題設定およびアドバイスを実施いたします。ご興味のある方は以下サイトをご覧ください。

 

【採用競争力診断サービス】

https://jinji.jp/hrconsulting/competitiveness/

執筆者

大園 羅文 
(経営支援部 シニアコンサルタント)

「採用・定着コンサルタント」として、中堅・中小企業を対象とした人材採用支援(新卒・中途)、若手人材の定着・即戦力化支援、人事制度の構築・運用支援に従事。
特に、『若手人材の採用・定着力の強化』を得意テーマとしており、中小企業独自の問題に対する支援を通じて、“欲しい人材を採用・定着させる企業づくり”をテーマに掲げている。
「成功事例で分かる 小さな会社の採用・育成・定着の教科書」(日本実業出版社) 著者

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

バックナンバー