なぜ、中小企業は若手採用に苦戦するのか

若手採用に向け、様々な手法を試しているものの、思うような成果が上がらないワケ…。それは、「なぜ、採用活動がうまくいっていないのか(=失敗原因)」「どうすれば、若手を採用できるのか(=課題解決に向けた打ち手)」を特定できていないためです。
本コラムでは、中小企業が陥りがちな若手採用における典型的な間違いと今後の採用課題について、3つの失敗事例をもとに解説いたします。
 
失敗事例①:とりあえず始めて失敗に終わる採用活動
中小企業A社では、若手人材の募集にハローワークやリクナビNEXT、マイナビ転職といった採用媒体での求人だけでなく、人材紹介会社やヘッドハンティング会社を活用するなど、毎年さまざまな採用方法を新たに試していました。
しかし残念ながら、採用活動にかかる時間・コストが年々増えるだけで、しばらく若手人材を採用できていませんでした。
A社が採用活動に失敗している原因は、場当たり的な活動に終始していたことにあります。具体的には、「求める人材像(採用ターゲット)を定めていない」こと、そして「いつ・誰が・何を・どのように採用活動を展開するのか?といった採用戦略が曖昧であった」ことです。
多くの中小企業では、従前からの採用活動のやり方にならって、“とりあえず”採用活動を始めて、“なんとなく”求職者からの応募を待つといった、無計画な採用活動を繰り返しています。どのような人材を採用したいのか?(=求める人材像)を定めない、場当たり的な採用活動では、かける資源と時間が分散してしまうため、もともと採用活動に制約のある中小企業の成功率をさらに下げてしまうのです。
このような間違いに陥っている中小企業は、求める人材の獲得に向けた採用戦略の策定が採用課題と言えます。具体的には、①求める人材および採用目標人数の設定、②現状の採用活動における問題点(=失敗原因)の洗い出し、③採用力強化に向けた重点課題の設定、④採用活動スケジュールおよび採用KPIの設定、を通じて自社の採用勝ちパターンの確立が必要です。
 
失敗事例②:他人任せの自社PR・求人原稿の使い回し
中小企業B社では、A社同様に複数の採用媒体に求人を掲載し、若手からの応募を集めようと積極的な採用広報を行っていました。しかし、そこに掲載している求人原稿は、仕事内容や給与等、一般的な「募集要項」に記載するような必要最低限の情報しか記載できておらず、自社の魅力・強みや、求職者にとっての入社メリットを感じさせる情報がおざなりになっていました。
中小企業では、総務人事部門の社員が本来の業務と兼任で採用活動を行なうケースが多く、物理的に採用活動に割ける時間に制限があるとはいえ、以下①②のような情報提供をしてはいけません。
 
①採用媒体会社が作成した求人原稿をそのまま掲載する
リクナビNEXTやDoda、エン転職など、世の中にはさまざまな採用媒体が存在していますが、ほとんどの採用媒体では、掲載前に取材を行ない、媒体の担当者やライターが求人原稿を作成します。
彼・彼女らはその道のプロフェッショナルですが、任せっきりは禁物です。自分の会社のことを社員とライターのどちらが理解しているかといえば、当然、社員のほうであることは疑いありません。
会社の持つ具体的な魅力・強みを、説得力を持って語り、その熱意を求職者に伝えるには、PR原稿を決してライター任せにせず、いったん仕上がったものでも、必ず社員の意見や考えを加えてブラッシュアップさせることが重要です。
伝える文章力はプロのライターのほうが優れていますが、ライターの力に社員の熱意や想いが重ならなければ、求職者の心を動かす文章とはなりません。
 
②過去に作成した求人原稿を使い回す
過去の求人原稿の使い回しは、人材採用に人員や時間を割けない中小企業ではありがちですが、求める人材や時代の変化によっても、求人原稿に求められる情報や求職者が魅力的に感じる情報は変わってきます。
こうしたトレンド等をもとに求人原稿をアップデートしていないと、求職者に刺さるアピールとはなりません。自社サイトのPV数・応募数などをこまめにチェックし、定期的
に原稿内容のリニューアルをし続ける、こういうところに手間ひまをかけることが応募を増やすためには必要なのです。
 
このような間違いに陥っている中小企業は、自社の魅力・強みが伝わるオリジナル求人原稿の作成が採用課題と言えます。具体的には、①自社の魅力・強みの洗い出し、②求める人材に刺さる魅力・強みの選定・言語化、③求人原稿への落とし込み、を行います。
また、近年はダイレクトリクルーティング手法をはじめ、様々な採用サービスがリリースされており、求職者が使用する採用媒体等にも変わりつつあります。そのため、求める人材と自社が活用している媒体との親和性を検証し、より適切な媒体・手法にシフトさせることも重要です。
 
失敗事例③:進め方や合否基準にバラつきのある、属人的な面接
中小企業C社では、一定の応募数を確保することができていましたが、面接の進め方や合否基準を標準化しておらず、全てを各面接官に一任をしていました。
結果、面接官によって進め方や質問事項が異なるだけでなく、面接官の主観(好き嫌い・合う合わない等)で、合否が決まることもあったため、採用のミスマッチや人材の獲得ロスを招いていました。
多くの中小企業では、C社のように会社としての合否基準を設けておらず、面接の属人化によって合否基準にバラつきが生じています。また、面接スキルの強化に向けた勉強会や研修機会を会社として用意しておらず、面接官の経験差によって正しい見極めができるか否かにも違いが生じるケースが多いです。
このような間違いに陥っている中小企業は、会社主導での面接官育成が採用課題と言えます。具体的には、面接官全員が正しく求職者を見極め、且つ面接を通じて自社への入社意欲を喚起できるよう、面接スキル強化をテーマとした勉強会や研修を会社が提供することが重要です。
 
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先述の通り、多くの中小企業が人材採用に苦戦する理由は、「なぜ、採用活動がうまくいっていないのか(=失敗原因)」「どうすれば、若手を採用できるのか(=課題解決に向けた打ち手)」を特定できていないためです。この状況を打開するために必要なのは、【採用活動の弱点と改善課題の見える化】を通じた、採用活動の抜本的改革です。
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執筆者

大園 羅文 
(経営支援部 シニアコンサルタント)

「採用・定着コンサルタント」として、中堅・中小企業を対象とした人材採用支援(新卒・中途)、若手人材の定着・即戦力化支援、人事制度の構築・運用支援に従事。
特に、『若手人材の採用・定着力の強化』を得意テーマとしており、中小企業独自の問題に対する支援を通じて、“欲しい人材を採用・定着させる企業づくり”をテーマに掲げている。
「成功事例で分かる 小さな会社の採用・育成・定着の教科書」(日本実業出版社) 著者

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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