適格年金移行先の選択眼(1) 中退共(払いきり または 内ワク)

いよいよ、これから適格年金の移行先についてです。
 
適格年金はご存知のように2012年3月末までに他制度に移行、あるいは廃止しなければなりません。
 
適格年金を他制度に移行する場合、その選択肢は次の4つです。
 
・中小企業退職金共済(中退共)に移行する
・確定給付企業年金に移行する
・確定拠出年金に移行する
・厚生年金基金に移行する
 
(1)中退共への移行のポイント
今回は中退共への移行を検討します。中退共に移行する場合のポイントは次の4点です。
 
①加入制限がある  
   ■一般業種(製造業、建設業等)   常用従業員数300人以下 または 資本金・出資金 3億円以下
   ■卸売業   常用従業員数100人以下 または 資本金・出資金 1億円以下
   ■サービス業 常用従業員数100人以下 または 資本金・出資金 5千万円以下
   ■小売業  常用従業員数 50人以下 または 資本金・出資金 5千万円以下
 
②適格年金の積立不足を気にしなくてよい
中退共は、適格年金の移行時点の資産をそのまま引き継ぐことができます。逆の見方をすれば、積立不足がある場合は、中退共の移行時には補えないということです。
 
③「個別仮想勘定方式」に切り替わる
中退共は加入月数と掛金の累積データをもとに最終の支払い額が決まります。つまり、従業員1人ひとりに個別仮想勘定があり、その中にデータが累積されている感じです。掛金は5,000円~30,000円の16種類があるので、従業員1人ひとりに掛金を決めていきます。
 
(2)中退共の加入に際して考えるべきこと
中退共は上記③の考え方によって、大きく「払いきり」方式と「内ワク」方式があります。
   
払いきり方式・・・中退共から支給される額そのものを退職金とする
内ワク方式 ・・・退職金の金額の一部が中退共から支給される
 
このうち内ワク方式は、中退共からの金額がもともとの退職金制度(自己都合)を超えないように掛金を設定しなければなりませんが、それ以外は掛金の決め方はあまり神経を使う必要はありません。
 
設計上、工夫が必要なのは、「払いきり方式」です。

払いきり方式の場合は、

①中退共からの支払い額の退職金モデルを決め

 
②掛金のルール(役職別、勤続別など)を決め

 
③個人別の適格年金からの移行額を受けて将来のシミュレーションをする

というプロセスとなります。
 
(3)どんな企業が中退共にふさわしいか
他の制度と比べると、加入条件さえクリアすれば、労使合意要件も必要とせず、あらゆる企業が簡単に加入できる、というのが中退共です。そこで、①確定給付のように積立不足が生じるのは避けたい ②確定拠出のように自己責任の制度には踏み切れない という意向の企業であれば中退共がオススメです。いわば両者の折衷案のようなイメージでしょうか。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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