退職金制度を人材戦略にどう活かすか その2

前回は、退職金不要論や無用論の背景、および従来型退職金制度と現在の人材戦略がミスマッチを起こしている要因を解説しました。では、これからの企業経営の中で、単に不要というばかりでなく、どのように活かせばよいのかを考えていきましょう。
  
ここで会社の若手人材をイメージしてみます。中には将来大きな貢献をしてくれる期待人材もいれば、逆にそうでない人材もいるでしょう。
  

若手人材のイメージ

毎年の働きや貢献度については、人事考課を通じて給与や賞与に反映させることによって、より実力主義の制度とすることが可能です。
 
しかし、従来の退職金に関していえば、貢献度よりも依然として年功要素が強く、「優秀な管理職より、高卒の一般社員の方が(勤続年数の長さが影響して)退職金が高い」という現象があちらこちらでみられます。こうしたイメージから、優秀な社員には退職金制度そのものが、不利な制度として映ります。なぜなら、本来は自分の実力に見合った報酬を得るべきなのに、長期勤続ではなく途中退職してしまっては、その分、支給率がカットされたりするからです。真に優秀な社員は、退職金で多少を損してでも、高い報酬を求めて自分を高く買ってくれる会社に転職するでしょう。優秀な社員にとっては、もはや『賃金後払い』は機能しません。
 
一方、非優秀社員は、退職金は依存の対象になりがちです。「転職するにも自信がないし、このまま定年までいれば退職金がもらえる」という、『賃金後払い』が逆作用を起こした状態です。こういう社員が増えてしまっては、会社は危なくなります。
  
そして、大半の社員は、退職金制度の内容を知りません。理解できていない状態では、せっかく実施している制度の意味がなくなります。
  
以上の考察から、これからの人材戦略にマッチした退職金制度に関し、3つの方針を掲げます。
  
「見える化」により社員の関心度を高めよう
優秀な社員の満足度を高め、非優秀社員の依存体質を改めるため、実力主義要素を高め、かつ後払いから前払いのシステムを目指そう
老後の生活保障に少しでもサポートできるシステムを目指そう
皆さんの企業でも、こうした方針をもとに、具体的な制度設計に入っていただきたいと思います。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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