2026年 最低賃金はどこまであがるのか?~最低賃金1,500円時代に向けて~
賃金制度
1:2026年度の最低賃金は全国加重平均で56円アップ
2026年9月3日に厚生労働省がとりまとめた「2026年度の最低賃金の全国加重平均額」は1,177円となり、前年度の1,121円から56円(引上げ率5.0%)の引上げとなりました。昨年度は66円、6.3%の引上げであり、2026年度は引上げペースがやや鈍化したものの、依然として高い水準での引上げが続いています。
都道府県別に見ると、最高額は東京都の1,280円、最低額は宮崎県の1,085円となりました。引上げ額は54円から65円の範囲で、最も大きかったのは佐賀県の65円となり、東京都、大阪府、神奈川県は54円の引上げとなっています。大都市圏と地方の最低賃金の格差が問題となっている中で、少しずつではあるものの縮小傾向となっています。
※詳細は以下のレポートをご確認ください。
「最低賃金レポート(2026年度版 速報)~地方最低賃金審議会の答申速報~(https://jinji.jp/news/report/18146/)」
2:最低賃金引上げの背景と今後の方向性
2026年7月に閣議決定された「骨太方針2026年」によると、最低賃金1,500円の達成時期は2020年代中から「2030年代前半のできる限り早期に」という目標に修正されました。少し引上げ幅は鈍化する傾向にはなるものの、仮に2032年に最低賃金1,500円を目標にすれば、1,500円-1,177円=323円を6年で達成することになります。323円を6年で単純に割ると、年間50円以上の引上げが必要となります。引上げ幅が当初見込みよりは縮小するものの、2026年度程度の最低賃金引上げが今後数年間は継続する見通しであることがわかります。
政府がこのような方針を示している理由としては、物価上昇への対応と合わせて、日本の賃金水準の低さがあげられます。以下は、世界の年収水準を比較したOECDの2025年のデータを加工したものです。(単位:千円)
※数値は従業員(雇用者)1人当たりの平均年収(年平均賃金)。米ドル換算のものを1ドル=158円で日本円に修正。国民経済計算 (National Accounts)ベースでの雇用者賃金総額を年平均雇用者数で割った値でフルタイム従業員ベースに換算・補正されている。
(https://www.oecd.org/en/data/indicators/average-annual-wages.html)
これによると日本は7,928千円と、OECD平均10,239千円を大きく下回っており、加盟国38か国中24位という結果になっています。1990年代以降、各国で行われてきた賃上げスピードに日本が追い付いてこなかったことを背景に、今や日本人の所得が世界水準を下回る結果となっています。
具体的に日本の最低賃金の引上げ推移をみていくと、下表のように日本の最低賃金は1997年以降2006年までは引上げ率が1%を下回り、2007年以降も2015年まで2%前後またはそれ以下にとどまっていました。この長い間の引上げ率停滞が、結果として日本の年収水準の相対的な低迷につながっていったものと考えられます。
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/toukei_00001.html)」より弊社加工
3:最低賃金1500円時代に向けて中小企業が今取り組むべきこと
これらの背景を踏まえると、最低賃金の引上げは一時的な動きではなく、中長期的な日本全体の課題と捉えていく必要があります。もし最低賃金が1,500円になれば、月間労働時間160時間の企業で月給に換算すると240,000円になります。これを上回る初任給を出した上で既存社員の賃金バランスも整えていく必要があります。
そこで、まずは人事的側面からできるアプローチとして、以下のようなステップが考えられます。
(1)中期的な要員・人件費計画を立てる
まずは10年程度の要員構造を捉えたうえで、賃上げを見越した人件費コストを試算し、捻出すべき付加価値を明確にすること
(2)組織・人員体制を見直す
上記計画を踏まえて、組織体制の見直し(部署の統廃合や多能工化による柔軟な人員配置体制の整備など)やDX化等による省力化を検討し、減った人員を補充せずに賄える組織づくりを検討する
(3)賃金全体のバランスを見直す
短期的な賃上げ対応ではなく、給与、賞与、退職金などの賃金構成、どのような職務・役割にどれだけ支払うのかといった賃金ポリシーを見直し、中期的なコストシミュレーションをしながら賃金制度全体を再整備する
これらを組み合わせながら最適解を探していくことになるでしょう。
但し、今後の賃金上昇見込みを捉えると、制度的アプローチだけでは限界があります。企業側としては生産性向上や適切な価格転嫁を進めるなど、持続可能な賃上げを実現していくための収益構造全体の改革が求められています。
政府側も中小企業の生産性向上や価格転嫁の支援策を推し進め、継続的な賃上げを実現できる環境整備を行っています。これらをフルに活用しながら、いかに自社の付加価値を引き上げていくのか、まったなしの対応が求められています。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
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