保険を使った退職金の積立て

退職金の積立て手段としては、中小企業退職金共済、特定退職金共済(商工会議所が窓口)、確定給付企業年金(厚生年金基金含む)、確定拠出年金などがありますが、それ以外の有力な手段として「保険」があります。上記に掲げた保険以外の手段が「全額損金」であるのに対して、保険は通常「ハーフタックス」と呼ばれる1/2損金の商品が使われます。
 
保険会社の販売する、いわゆる保険商品には様々な種類がありますが、退職金の積立てとして用いられるものとしては「養老保険」が一般的です。養老保険とは、簡単に言ってしまえば、従業員各人ごとの一定年齢時(通常60歳)に満期となる定額積立預金に、おまけ〔=万が一のこと(死亡、高度障害)があった場合の保障〕がついている商品、と理解できます。つまり、特に何もなければ60歳になったら必ず保険金がもらえ、途中で何かがあっても同額の保険金がもらえるしくみです。この商品特性を利用して、退職時の必要額を保険金で充当することができるよう、保険会社と契約をします。
 
【養老保険を使った退職金】
   定年退職時       ・・・満期保険金
   死亡・高度障害時   ・・・死亡保険金(満期保険金と同額)
   途中退職時       ・・・解約返戻金
 
以下、養老保険を使った退職金の留意点をまとめます。
 
①本人への直接払いを避けることができる
他の中退共等の諸制度は、退職を要件として本人に直接支払われる制度です。しかし養老保険は直接本人ではなく会社が受け取り、それを再び会社から本人に退職金として支払うお金の流れとなります。特に中途退職が円満退職ばかりではない問題のある退職の仕方をして退職金を減額したい場合にも、保険金・解約返戻金は会社が受け取りますので本人に直接支払われることはありません。
  
②税制メリットは小さい
全額損金ではなく、1/2は資産計上、残りの1/2が損金計上なので、税制メリットは小さくなります。また受取時にはいったん益金計上します。(退職金支払いは損金計上するので相殺)
  
③もしもの場合が生じた場合、若年層でも多額の保険金が支払われる
満期以前に死亡や高度障害が生じた場合は、被保険者には一定の保険金が支払われます。滅多にないことではありますが、もし入社後間もない社員を被保険者としていた場合、会社の規程(弔慰金規程、死亡退職金)以上の保険金が支払われる可能性があります。
全員加入が原則ですが、一部加入しない社員がいた場合に、保険金が下りる下りないの差が生じ、不公平のもととなります。
 
以上のことを理解しつつ、退職金の積立て財源の一つとして保険を有効に活用していきましょう。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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