「中退共」の将来

今年1月の本ブログにて、『「中退共の減額」の背景と今後の行く末』と題して、中退共の将来性についてやや悲観的な記事を書きました。その後「中退共は大丈夫?」という問い合わせを何件もいただくなど反響があり、やはり中退共に加入しておられる企業にとっては看過できない問題であることをあらためて感じました。そこで再度、最新情報を織り交ぜ、私見での中退共の将来性を書きたいと思います。
 
中退共の財政状況については、ホームページに記載されています。
http://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/joho/index.html
 
最近5年間の当期損益と累積剰余金(累積欠損金)の推移は、次のとおりです。(単位:億円)
    平成19年度  当期損益 △1,413  累積欠損 △1,564
    平成20年度       △1,929       △3,493
    平成21年度        1,536       △1,956
    平成22年度       △  101       △2,057
    平成23年度          316       △1,741
 
直近の決算期は平成24年度3月期となるのですが、その実績結果が正式に公表されるのは毎年8月頃です。ご存じのように、アベノミクス効果で株価の上昇が続くなど、資産運用にはプラスの結果が期待され、審議会提出用資料によれば、損益見込み+690億円、累積欠損金は△1,051まで減少、という見込み数値が掲載されています。
 
しかし、直近の傾向をグラフ化してみるとよくわかるのですが、最近の資産運用においてはプラスとマイナスの幅が約10%と大きく、今年の運用がプラスになったとしても来年の運用がどうなるかはわかりません。資産運用の世界では、このことを「リスク」といいます。
中退共も、厚生年金基金や他の企業年金と同様、依然として運用リスクにさらされている状態が続くことに変わりはないことを十分に認識しておく必要があります。
 
こうした状況をふまえ、毎年の厚労省審議会(いわば中退共の経営会議)が開催されるのですが、今年のHPをみると、経営側の最大の関心事が「累積欠損の解消」であることがわかります。そして累積欠損解消計画が予定より遅れたために、今後当面は、加入者への付加退職金を見送りましょう、との方針です。これは加入者(従業員)へのサービス(付加退職金)よりも、中退共の経営の健全性、安定性を重視している姿勢の表れであり、私はこのことを評価します。何よりも退職金や年金に関しては、「制度が長期的に安定しているかどうか」が生命線だからです。
 
結論としては、中退共の将来性は「未だなんともいえない」。そして、今私たちにできることは「毎年のリスクをみながら、中退共の健全性が確保できるまで、しっかり見守る」ことしかありません。今後も、中退共関連の情報が入りましたら、タイムリーにアップしていきたいと思います。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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