採用担当が、今の時期にやっておきたい採用データ分析

新卒採用活動において3月から5月は節目の時期です。2024年卒の学生を対象とした活動が終了、2025年卒の学生を対象とした採用活動では母集団形成が完了しています。そのため、これまでの採用活動を振り返ることができ、その結果、2026年卒の学生を対象とした採用活動の計画策定に活用できることが理想的です。そこで今回は2024年・2025年卒の採用活動において、両方で振り返ることができる母集団形成段階の振り返り方として、「集客力の評価」と「費用対効果」の2つの観点からをご紹介します。振り返りの結果を参考にして2026年卒の学生向けの母集団形成方法の検討に活かしてください。
 
(1)母集団形成方法の「集客力」を評価する
母集団形成の成果を測定する一番の指標は集客力です。集客力を評価するために合同企業説明会なら着座数、インターンシップなら参加数、ナビサイトならエントリー数などの成果を確認します。集客の成果は単年・経年で確認し、結果に対してどのような要素が影響したのかを原因を分析していきます。
母集団形成方法によって分析の観点や対策は異なります。そこで合同企業説明会、インターンシップ、ナビサイトの3つ分けて振り返り方を紹介します。
 
【合同企業説明会】
合同企業説明会では「合同企業説明会自体の集客力」と「自社のブース集客力」の2つを確認します。
 
①合同企業説明会自体の集客力
参加する企業側としては集客力が高い、もしくは集客実績が伸びている合同企業説明会を洗い出し、参加することが大切です。合同企業説明会は毎年同じ時期に開催されます。季節要因などによる集客の変化が起こりにくく、主催企業が学生集客にどれだけ力を入れるかが結果に表れます。そこで自社が参加している、もしくは、大手主催や気になっている合同企業説明会の単年・経年における参加学生数を確認します。参加学生数を比較することで、集客力の高い合同企業説明会や伸びている合同企業説明会を確認し、次の計画の参考にしましょう。
 
②自社ブースの集客力
自社ブースへの着座数を確認し、集客力に影響した要素は何かを考察します。継続して参加している合同企業説明会であれば、経年の実績とも比較します。着座数が良し悪しについて、結果に影響を及ぼした要素を考察します。なお、着座数に影響する要素としては主に次の4つが考えられます。

 ・自社集客担当やプレゼンターによる違い
 ・参加学生属性の違い(文理比率や男女比率による影響)
 ・ブース装飾の違い
 ・ブース位置の違い(入口からの距離など)
 
【インターンシップ】
インターンシップは合同企業説明会と異なり、「開催時期」を企業側が決定します。その為、開催時期が集客結果に影響します。そこで、開催時期が適切であったかを確認することが重要です。他のイベントと被って学生の取り合いになることは避けるべきです。例えば、
 ・学生のテスト期間と被っていなかったか
 ・大きな採用媒体業者の実施イベントと被っていなかったか
 ・同地域で同業種の大企業の採用イベントと被っていなかったか
などの観点から確認するとよいでしょう 。テスト期間や採用媒体のイベントは事前に実施日を確認できます。振り返り の際や採用スケジュールを立てる際には必ず確認しましょう。
また、ターゲット学生が上手く集客できていない場合には、イベントタイトルや概要説明文もチェックしましょう。ターゲット学生が興味を持つフレーズやワードが足りていないことが考えられます。具体的にどのような体験ができるかを詳しく説明し、ターゲット学生が興味を持ってもらえるようなワード(理系ならモノづくり体験、実験など)をタイトルや説明文に含めると良いでしょう。
 
【ナビサイト】
ナビサイトは、エントリー数やナビサイト経由の申込数を確認します。上手くいっていない場合には自社のターゲット学生が興味を持ちやすい原稿になっているかを確認します。例えば、以下のような点をチェックしていきます。
 ・自社の強みや魅力をしっかりと説明できているか
 ・学生に伝わりづらい表現(業界用語など)を使っていないか
 ・同じ場所に掲載する記事と写真に整合性が取れているか
  (社員紹介ページで会社の外観写真を使っている)   …etc.
 
仮に、問題があると判断した場合は何を伝えるかを明確化し、ターゲットに対する訴求力のある内容にブラッシュアップしていきましょう。
また、媒体によってはブログを書ける機能を使用できるプランもあります。企業の情報を集めたい学生にとって、ブログは有効な手段です。ナビサイト上で、学生にとって目新しい情報を定期的に発信できれば、興味をもつ学生も増える可能性があります。なお、ブログ掲載欄はあっても投稿がない場合にはマイナスイメージに繋がるため、注意が必要です。
 
(2)「費用対効果」の観点でも振り返る
振り返りを行う際には費用対効果の観点で見る事も大切です。限られた予算内で採用活動を行っている企業も多いでしょう。だからこそ、限られた採用予算を効果的に投下できているかを確認するため 、母集団形成方法ごとの費用対効果を算出します。費用対効果の測定には、量と質の2つの観点で見ていきます。量の観点では各イベントに参加した学生数を費用で割った集客単価を活用します。質の観点では採用人数を採用費用で割った採用単価を見ていきます 。また、母集団形成に十分なコストをかけられていない中小企業もよく見かけますので、母集団形成にかかるコスト総額もチェックが必要です。参考データ(※1)として、2024年にマイナビキャリアリサーチLabが発表した母集団形成費用別のデータを参考にしてください。
 

母集団形成にかかるコスト総額

 
今回は採用活動における母集団形成の振り返りをテーマに、振り返り手法や見直しの方向性をお伝えしました。採用活動は複数年次の活動を同時並行に行うことが求められます。忙しい中で振り返りが不十分な状態で毎年同じような活動になってしまいがちです。上手くいかない方法を繰り返しても成果にはつながりません。今回ご紹介した振り返り方を参考により効率的、効果的な母集団形成に繋げられるようにしてください。
 
【参考】
※1 マイナビキャリアリサーチLab マイナビ2024卒企業新卒内定調査

執筆者

岡本 充裕 
(人事戦略研究所 コンサルタント)

前職では、製造業にて経理・採用・制度企画などに7年間従事。組織の抱える悩みや課題を解決する事の難しさを痛感するとともに、組織創りの遣り甲斐を感じた。 この経験を活かして、より多くの企業に対して支援をしたい想いから、新経営サービスへ入社。
コンサルティングを通して、経営者の『抱える問題を解決する』『夢を叶える』為の力になりたいという熱い想いを胸に、経営者と二人三脚で歩む人事コンサルティングを心掛けている。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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