「中退共の減額」の背景と今後の行く末

昨年(2012年)11月21日、日本経済新聞に『中小の退職金 減額』という見出しが大きく踊っていたのをご記憶の方も多いと思います。これは中小企業退職金共済制度(いわゆる「中退共」)についての報道であり、中退共に加入していない企業にとっては全く関係のない話です。 しかし、以前当ブログにも書いたように、厚生年金基金がいよいよ解散に向けて動き出したことと考え合わせると、このような退職金支払いのための「集団管理型の資金管理制度」はもはや時代に合わなくなっていると断言できます。
 
中退共のホームページをみると、財政状況が掲載されています。これによると、平成23年度末で総資産3兆7千万円に対し、1,741億円の累積欠損を抱えており、ピーク3,500億円(平成20年度)からは約半分となっているものの、依然として債務超過状態になっていることがわかります。
 
私が中退共の経営者だとして、経営面で最も恐れるのは
 
財政状況悪化→信用不安→加入企業の離脱→制度存続の危機→中退共の制度廃止
 
というシナリオ。そのためにも財政状況悪化をなんとか食い止めなければなりません。これについては資産運用で利益を得るのが短絡的な解決策ですが、昨今のご時世では、なかなか安定した運用は望むべくもありません。
 
そこで今回の「給付減額」という措置が浮かんできたのです。報道では「予定利率の引き下げ」とよくわからない書き方をしていますが、実際は一定の掛金に対しての給付額を減額するという内容です。
 
皆さんの会社ですでに中退共に加入しておられる場合は、一度退職金制度をチェックしてください。そして今回報じられている中退共の減額が、自社にどのような影響を与えるのか、しっかりと見通しを立てていただく必要があります。わからなかったら弊社にいつでも相談ください。
 
なお、今回の予定利率引き下げは、通例ですと3月の厚労省の審議会で本決定となり、4月から適用される見通しです。引き続き報道に十分に注意を払ってください。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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