企業年金の将来像(5) 年金確保支援法より

今月のはじめに国会で審議されていた「年金確保支援法」が可決されました。この内容は、公的年金である国民年金についての法改正が中心となっていますが、その中に一部企業年金に関する改正も含まれています。
 
この中で特筆すべきは、確定拠出年金(以後DC制度)における、いわゆる「マッチング拠出」の解禁です。企業型確定拠出年金では通常企業のみが掛金を拠出することができます。それに対してマッチング拠出というのは、従業員が任意で、企業の拠出金に上乗せして掛け金を追加することができる制度です。
 
DC制度が施行されて10年になりますが、導入企業での評判は芳しくありません。というのも、従業員の無関心さが各種アンケートで如実に表れているからです。「自分がどんな商品で運用しているか全くわからない」「そもそもDC制度がどんな制度がわかっていない」という従業員が多く、自己責任を標榜するDC制度の運営上のネックとなっており、このままでは将来の年金資産の確保という点で問題が生じる、というのが企業担当者からの多くの意見です。
 
そこで、従業員自らが自分の意思で掛金を追加することができるマッチング拠出を導入することによって、従業員の関心を喚起できるのでは、という目論見もあり、この度法改正が実現したというわけです。
 
具体的な拠出限度額は、企業の限度額の範囲内に定められ、若手の多くは数千円という掛金が多いのが実態ですので、金額面でそれほど大きな資産形成になるとはいえません。しかし、従業員が「自分の将来の老後資産を自分で確保する」という本来のねらいにはフィットしたものといえます。
 
導入されている企業も、今回の法改正を機会に、自社のDC制度のあり方を見直されてはいかがでしょうか。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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