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「ジョブ型人事」と「成果主義人事」の違い③

2021年05月10日 カテゴリ:人事制度

執筆者:岩下 広文

人事戦略研究所 上席コンサルタント

大学卒業後、国内事業会社において人事・総務等の実務に従事。その後、人事アウトソーシング会社、及び、外資系大手コンサルティングファーム(※監査法人系)にて人事コンサルティング業務に従事した後、現職。人事評価・賃金制度構築や退職金制度設計だけでなく、組織・人事面における幅広いテーマでのコンサルティング経験を有する。人事の実務経験を活かした運用性の高い制度設計に定評がある。

前回のブログでは、本稿のテーマである「ジョブ型人事」と「成果主義人事」の処遇制度上の違いに関する論考として、昨今の流行りである「ジョブ型人事」について、その制度的特徴を解説しました。改めてその特徴をまとめると、
 ■その職務が"本来的に有している"難易度(レベル)や市場価値に基づいて処遇を決定する仕組み
と定義することができます。
また、上記定義を前提とした上で、本稿の結論として述べなければならない「ジョブ型人事と成果主義人事との制度的・本質的差異」については、
 ●ジョブ型における職務レベルの判定に際して考慮すべき成果は、「期待成果」である
 ●成果主義の評価・処遇に際してフォーカスすべき成果は、「結果成果」である
と結論付けました(※筆者私見)。

今回のブログを執筆している時点(2021年春)では、昨年の後半期に比べると、 "ジョブ型ブーム(というよりもジョブ型狂想曲)"も幾分かは落ち着いてきたように感じます。もちろん、「ジョブ型人事」に強い興味・関心を持つようになった経営者や人事パーソンが格段に増えたことに変わりはないため、当面、ジョブ型人事の導入を検討する企業は高止まりの状態が続くものと思われます。ただ、そもそも、昨年の極めて特殊な要因(コロナ禍)を除いても、日本企業に置かれている状況を鑑みれば、「ジョブ型人事」の考え方や仕組みは中長期的により浸透して然るべきと考えています。従って、昨年の「ジョブ型狂想曲」が、未だに年功的処遇から脱却できない日本企業に抜本的な人材マネジメント改革を推し進める契機となった、とみなすこともできます。そう考えれば、昨年のブームを、行き過ぎた「ジョブ型狂想曲」であると半ば否定的に捉える必要はないのかもしれません。。。

さて、前回のブログの最後で触れた通り、今回のブログでは、前々回(①)のブログの冒頭で述べた「実際の人事制度の構築・導入にあたっては、両者(=ジョブ型人事&成果主義人事)を併用するケースも多分にある(※特に、ジョブ型人事を主軸に据える場合には、成果主義人事を併せて導入するケースが多い)」の意味する所について解説します。

前回のブログでも具体的に解説したように、「ジョブ型人事」においては、賃金や等級などの人事処遇を決定する際の軸・基準として、「ジョブ(=仕事=職務)」を据えることになります。従って、一人一人の社員が実際にどのようなジョブ(職務)に就いているのかを明らかにした上で、そのジョブ(職務)のレベルや価値に応じた処遇を適用します。この「ジョブ(職務)のレベル」を判定するにあたっては様々な要素を考慮することになりますが、判断要素の一つである「成果」については、【結果成果】ではなく【期待成果】をベースに据えるというのが、ジョブ型人事における大原則となります。なお、【期待成果】とは、端的に言えば「その職務において"本来的(標準的)に期待される成果の内容・レベル"」と定義できます。

以上のような制度的特徴を持った「ジョブ型人事」の下では、処遇の軸となる「等級ランク」や「基本給」については、職務レベルを基準として設定することが原則であり、かつ一般的でもあります。このため、前回のブログでも例示したように、例えばBさんとCさんが「ジョブZ」という同じ仕事(※同じ職務レベル)に就いている場合、等級ランクや基本給は同等に処遇されることになります(※なお、基本給については、議論をシンプルにするため、一旦、シングルレートで考えます)。ただ、実際の仕事のパフォーマンスとしては、"Bさんは継続的に低い成果しか達成していない"、一方で"Cさんは継続的に高い成果を達成している"といったようなケースも当然に起こり得ます。従って、BさんとCさんが"同じ仕事内容"を担っているからといって、処遇に全く差を付けない仕組み・運用にしてしまうと、恐らくBさんは大きな不満を持ち、最悪の場合には離職してしまうことも十分に考えられます。また、会社にとっても、成果が大きく異なる2名の社員を"全く"同じ賃金水準で処遇することは、適切性や公平性を欠いた人件費配分になってしまいます。

そこで、一般的には、「ジョブ型人事」を人材マネジメントの軸に据える場合であっても、実際のパフォーマンス(成果や行動など)によって処遇に然るべき格差を設けることになります。なお、純粋なジョブ型を採用する場合には、同じ職務レベルである限りは、職務等級ランクに差を設けることは非合理となってしまうため、賃金水準の部分で格差を設けることになります。特に多いのが、「賞与でのメリハリ」になります。要は、
 ●同じ仕事内容(=同じ職務レベル)であるため、等級ランクや基本給(シングルレート)は同じ
 ●但し、毎年・毎期の成果の程度によって、賞与支給額に差をつける
といった制度・運用になります。このような仕組みにすることで、「ジョブ型でありつつ、パフォーマンスに応じた適正処遇も実現する」ことが可能になります。なお、「同一職務であれば同一基本給額」の仕組みの場合には、賞与の部分で大きなメリハリがつくように設計します。

以上が、前々回の冒頭で述べた「実際の人事制度の構築・導入にあたっては、両者(=ジョブ型人事&成果主義人事)を併用するケースも多分にある(※特に、ジョブ型人事を主軸に据える場合には、成果主義人事を併せて導入するケースが多い)」の具体的に意味する所になります。結論だけ見てしまうと、"なんてことはない"・・・と思われたかもしれませんが、実際、その通りです。同じ仕事内容であっても、実際の成果は人によって異なるため、当該成果に対する処遇については、"結果成果"にフォーカスした「成果主義人事」の考え方を取り入れる、という極めて自然な流れになります。ただ、そのような流れを、ジョブ型人事と成果主義人事の制度的・本質的差異を十分に理解・考慮した上で、意図して制度に落とし込めているかどうかは、当該制度に対する社員の理解度・納得度を左右する重要なポイントになります。すなわち、「"仕事(ジョブ)"と"(結果)成果"を理論的に切り分けて制度構築できているか?」ということです。もし、理屈を踏まえずに意図せず「ジョブ型人事」と「成果主義人事」を"たまたま"組み合わせただけ・・・の人事制度を作ってしまうと、おそらく、そのような人事制度が会社や社員の成長に資する仕組みとして機能する可能性は低いでしょう。さらには、ジョブ型人事と成果主義人事の双方のデメリットがだけが表出してしまい、社員からの反発等によって早々に制度破綻してしまう可能性も十分に考えられます。

前々回から今回までの3回にわたって、「ジョブ型人事」と「成果主義人事の違い」について解説してきました。「ジョブ型人事」は、考え方として決して難しい代物ではないのですが、実際の制度として構築し運用していくとなると、これまで年功的人事にどっぷりつかってきた日本企業・日本人にとっては、様々な困難やハードルが伴うことになるでしょう。そのような困難・ハードルを適切に乗り越えていくためには、「まずは各制度の本質を十分に理解する」ことが大切です。その上で、「ジョブ型人事とは?」という問いに対して、自社なり、自分なりにしっかりと語れるようになってから、具体的な検討や設計に着手することを強く(×2)お勧めします。そうすれば、真に有意な仕組みの構築・導入・運用につなげていくことができると、筆者は考えています。

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※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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