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二項対立で考える①

2019年06月10日 カテゴリ:戦略的人事

執筆者:飯塚 健二

人事戦略研究所 マネージャー

独立系システム開発会社にてSE・人事・経営企画等の実務を経験。その後、大手金融系シンクタンク、監査法人系コンサルタント会社にて人事コンサルティングに従事した後、現職。中小企業から大手企業まで規模を問わず幅広い人事・人材育成コンサルティング実績を持つ。 経営戦略の実現に向けた人事制度改革・定着化や要員・人件費マネジメント等のハードアプローチに加え、言語科学や行動科学の知見を活かした人材開発(コミュニケーション研修やビジネススキル研修、コーチング・ワールドカフェ等)を手掛ける。iWAM®認定マスター107-0001取得。

例えば、社員の視点に立って年収水準を上げようとすると、経営の視点ではコスト増となり簡単に受け入れられるものではない。経営的には人件費の変動費化(年収に占める賞与の支給割合を増やす)を進め利益体質を改善したいが、社員の側からすると毎月の安定的な給与が減ることになり簡単に受け入れられるものではない。このように、「あちらを立てればこちらが立たず」、「こちらを立てればあちらが立たず」、堂々巡りになってしまうということが、人事の世界ではよく起きる。このような堂々巡りを回避するためには、二項対立の軸となっている視座が何か(先の例では社員と経営)をまず掴んでおくことが有用である。

ここでは、人事戦略や施策を検討するときによく対峙する二項対立についてご紹介したい。それは、「短期的な視座」に立つか、「中長期的な視座」に立つか、という「時間軸」である。

「短期的な視座」に立てば、例えば、「今期の業績をいかに上げるか」が重要な価値基準になる。そうすると、人材活用については、「いま」その仕事ができる人を配置するということが基本的な考え方となる。いまできない人に仕事を任せるよりもいまできる人に仕事を任せることが優先事項となり、人を育てていくという人材投資の考え方は希薄になりがちになる。また、報酬については、業績と連動した給与や賞与、前払退職金等々、「いま」の貢献に対して「いま」報いる(pay now)ことが基本的な考え方となる。いわゆる実力主義である。この場合、社員にとっては不安定さやプレッシャーを強いるため、優秀な人材を引き留めるためには世間水準と比べて相応に高い年収水準が求められることになる。

一方、「中長期的な視座」に立てば、例えば、「中長期的に能力をいかに高めていくか」が重要な価値基準になる。そうすると、人材活用については、「近い将来」できるようになることを期待して配置を考えていくことになる。部門間ローテーションをしながら幹部候補を育てるアプローチも、中長期的な視座に立った施策と言える。短期的な視座に比べて、人材投資の考え方を重視しているとも言える。また、報酬については、これまでの貢献の積み上げやこれからの期待を込めて段階的に昇給していく、あるいは今期の結果だけでなくその頑張りやプロセスも加味した賞与、中長期勤続を奨励する退職金等々、「過去」や「未来」も含めて報いることが基本的な考え方となる。

このように、どちらの視座に立つかによって、人事戦略・施策も変わってくる。ただし、どちらか一方が良いというものでは必ずしもない。例えば、一般社員は中長期的視座に立ち、管理職は短期的視座に立つなど、組合せやその比重には十社十色の考え方があってよい。大切なことは、各施策の位置付けを明確にしておくことであり、それが効果的な人事戦略を考える上での勘所の一つと言える。

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※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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