卒業後3年以内の既卒者採用に関する奨励金
採用・定着
2011年度入社の大卒の就職内定率が、昨年12月1日時点で1996年以降最低の68.8%という数字が発表され、「超」のつく就職氷河期という表現がメディアを賑わせています。
リーマンショック後の不況下で企業が採用を絞っている事が、就職氷河期の原因と考えられがちですが、大学の設置数の大幅な増加に伴い、過去20年間で大学生の数が40万人から56万人に増えたことにも起因しています。
このような状況の中、厚生労働省は雇用の拡大のために、卒業3年以内の既卒者を採用する事業主向けの奨励金制度を創設しました。
現在、利用可能な奨励金は3つあります。 以下、それぞれについて、簡単に内容とポイントをご紹介します。 (厚生労働省ホームページより一部抜粋)
1.3年以内既卒者(新卒扱い)採用拡大奨励金
大学等を卒業後3年以内の既卒者も対象とする新卒求人を提出し、既卒者を正規雇用する事業主に対し、ハローワークにおいて「3年以内既卒者(新卒扱い)採用拡大奨励金」を支給します。【 正規雇用から6か月経過後に100万円支給】
<ポイント>
対象となる未内定新卒者の条件は、他の2つの制度とは異なり、高専、大学(大学院・短大)、専修学校等の新卒者となっています。 よって、中学校、高校の新卒者は対象となりません。 また、「3年以内の既卒者も対象とする」という表現から、求人票を提出後、奨励金の支給対象とならない、”卒業前の学生が応募してくる可能性がある”、ということも考慮する必要があります。
2.3年以内既卒者トライアル雇用奨励金
中学・高校・大学等を卒業後3年以内の既卒者を正規雇用へ向けて育成するため、有期で雇用し、その後正規雇用へ移行させる事業主に対し、ハローワークにおいて「3年以内既卒者トライアル雇用奨励金」を支給します。
【有期雇用(原則3か月)1人月10万円、正規雇用移行から3か月後に50万円支給】
<ポイント>
対象となる未内定新卒者の条件は、上記1とは異なり、中学生・高校生、高専、大学(大学院・短大)、専修学校等となっています。 3ヶ月間の有期雇用期間があるため、新卒者の働きぶりを見たうえで、正規雇用するか否かを判断することが可能です。また、雇用しない場合も、有期雇用期間の「実施結果報告書」を提出することで、月額10万円×3ヶ月分の奨励金を受け取ることが可能です。 こちらの制度は、平成23年度までの時限措置であるため、遅くとも10月から有期雇用が開始出来るよう、早めにハローワークへ求人を提出することをお勧めします。
3.既卒者育成支援奨励金
長期の育成支援が必要な既卒者を有期雇用(3か月のoff-JT期間を含め原則6か月)し、育成のうえ正社員に移行させる成長分野(環境等)の中小企業の事業主に支給します。
【有期雇用(原則6か月)月10万、Off-JT期間(3か月)は各月5万を上限に実費を上乗せ、正規雇用から3か月後に50万】
<ポイント>
対象となる未内定新卒者の条件は、上記2と同様です。 こちらの制度が上記1、2と大きく異なるのは、有期雇用期間が6ヶ月であり、なおかつその内の3ヶ月間は、座学による研修を受講させることが必要である点です。 また、奨励金の支給対象となるには、中小企業であり、且つ厚生労働省が指定する成長分野であることが必須条件です。 どのような座学を受講させ、育成するかについて、求人の提出前に「育成計画書」を提出する必要があることからも、受給のハードルは上記1、2と比較して高めであると言えます。 こちらの制度も、平成23年度までの時限措置であるため、上記2と同様、早めにハローワークへ求人を提出することをお勧めします。
各制度の詳細については、厚生労働省のホームページをご覧下さい。
それぞれ80万円から125万円の奨励金が受給できるため、条件に合致する場合は活用するのが良いと思います。
ただし、あくまで「会社業績に貢献する人材」を採用することが目的であることを念頭に置いたうえで、求める人材を採用するための一つの手段として適切か否か、判断していただきたいと思います。 その判断を行ううえで、面接では以下のような質問をすることをお勧めします。
<質問例>
・どうして、新卒で就職をしなかったのですか。
・卒業してからこれまでの期間、どのように考え、何をしていましたか。
・現在、どのような企業を志望されていますか。企業を選ぶ基準はありますか?
上記のような質問を行い、回答に対してさらに深く突っ込んで聞くことで、 「止むを得ない事情があり、既卒になってしまったが、しっかりと自身の考えをもって就職先を探しているような応募者」なのか、「なんとなく就職できず、とりあえず就職しないといけないと思い、ハローワークに進められるがまま応募してきたような応募者」なのかを見極めることが非常に重要です。
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※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。