退職金制度を人材戦略にどう活かすか その1

最近経営者と退職金に関するお話をすると、「将来退職金ってなくなるんじゃないの?」と問いかけられることが多くなってきました。このような「退職金制度不要論」「退職金制度無用論」の背景には、従来の年功序列・終身雇用の経営システムが崩壊したことがあげられるでしょう。裏を返せば、近年の新しい人材戦略と、従来型の退職金制度とがミスマッチを起こしているということもできます。
 
従来から、退職金制度を実施する意義として、次の3点が言われてきました。
 
1.功労報償説
2.賃金の後払い説
3.老後の生活保障説
 
このうち、1の功労報償説については、イメージとしては終身雇用が前提の説といえます。つまり、「長年勤めてくれてご苦労さんでした」という、長期勤続に対する労いの意味としての退職金です。会社が雇用を守ること自体は大切なことだと思うのですが、社員の側は「この会社で定年まで勤めよう」という意識はあまりないようです。
 
2点目の賃金の後払い説については、給与をそのまま払うのではなく、長期勤務することによって、退職金というまとまったお金を後から支給するという点で、社員の引きとめ策として有効でした。しかし、「人手不足」の時代にはマッチしますが、人材の質が問われる近年には、単に引き止めることが果たして有効かどうかは疑問です。
 
3点目の老後の生活保障説に関しては、公的年金の不安を抱えるニッポンでは、これからますますニーズの高まりをみせるでしょう。
 
このようにしてみると、1と2の意味合いは薄れ、3の意味合いが強くなる傾向にあることがわかります。では、「不要論」「無用論」にとどまることなく、もっと活きた制度とするためには、人材戦略としてどのような位置づけで考えればいいのでしょうか。(次回に続く。)

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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