人事制度コンサルティングの料金・費用設定

人事制度設計のコンサルティングを検討する際、人事担当者の方から時折聞かれるのが「料金・費用の決まり方」です。戦略コンサルやITコンサルでは「コンサルタントのランク×工数(人月)」で見積もられるのが一般的ですが、人事制度コンサルでは「社員数」や「設計テーマ」を基準に価格が決まります。この違いには、人事制度ならではの「効果ベース」という考え方が潜んでいます。

 

なぜ「工数×単価」ではないのか

 戦略・ITコンサルの料金モデル

戦略コンサルやITコンサルでは通常、以下のような構造で費用見積もりが作られます。

  • ・コンサルタントのランク:アナリスト、コンサルタント、マネジャー、パートナーなど
  • ・単価:1人月あたり150万円~500万円程度
  • ・工数:プロジェクトに投入する人月数

つまり、「誰が、どれだけの時間をかけたか」という投入リソースが価格の根拠になっています。

 

人事制度設計コンサルの料金モデル

 一方、人事制度コンサルティングでは、次のような要素で価格が決まります。

  • ・社員数(50名、100名、300名、1000名など)
  • ・設計テーマ(等級制度、評価制度、給与制度、賞与制度、退職金制度、定年再雇用制度など)
  • ・支援スタイル(制度設計まで代行するか、アドバイス支援までか)

 

具体的な料金構造のイメージを見てみましょう。

 

対象テーマ 50名程度 100名程度 300名程度 1,000名程度
評価のみ ○~○万円
(3~4か月)
○~○万円
(3~4か月)
○~○万円
(5~6か月)
○~○万円
(6~8か月)
等級+評価 ○~○万円
(4~6か月)
○~○万円
(4~6か月)
○~○万円
(6~8か月)
○~○万円
(8~10か月)
給与・賞与 ○~○万円
(4~6か月)
○~○万円
(4~6か月)
○~○万円
(6~8か月)
○~○万円
(8~10か月)
人事制度全般構築 ○~○万円
(6~8か月)
○~○万円
(8~10か月)
○~○万円
(10~12か月)
○~○万円
(12~15か月)

 

このように、社員数や対象テーマが増えるほど、期間や費用・価格が上昇します。これは単に「作業量が増える」だけでなく、制度がもたらす影響の規模が価格に反映されているためです。

 

また、具体的な料金水準は明示しづらいものの、これまでの経験則からは、
 
社労士や個人コンサル < 独立系コンサル会社(弊社など) < 総研など大手コンサル会社 ≦ 外資系コンサル会社
 
というバランスは、間違いなさそうです。

 

「効果の規模」が価格を決める理由

 人事制度は、企業の全社員の「評価」「給与」「キャリア」に直結します。そのため、

  • ・対象人数が多いほど、制度改定による影響範囲が広がる
  • ・1人あたりの給与・賞与・評価が変われば、総人件費への影響も大きくなる
  • ・離職率・生産性・エンゲージメントなど、組織全体への効果も拡大する

 

つまり、人事制度コンサルは「何時間かけたか」ではなく、「何人の社員に、どれだけの効果をもたらすか」という視点で価値が測られているのです。

 

効果規模の違いを数値で見る

たとえば、乱暴ではありますが、人事制度全面改定により、1人当たり人件費が20万円上昇したものの、生産性(1人当たり付加価値高)が50万円向上し、定着率が2%改善したケースを想定すると、企業規模によって以下のような違いが生まれます。

 

【1000名の企業】

  • ・総人件費への影響 : 20万円×1,000名=2億円上昇
  • ・総付加価値高への影響 : 50万円×1,000名=5億円上昇
  • ・離職防止効果 : 1,000名×2%=20名の定着

 

【100名の企業】

  • ・総人件費への影響 : 20万円×100名=2,000万円上昇
  • ・総付加価値高への影響 : 50万円×100名=5,000万円上昇
  • ・離職防止効果 : 100名×2%=2名の定着

 

このように、効果の規模=コスト・リスクの大きさが異なるため、社員数に応じて価格が設定されるのは合理的といえます。これは、HRテックの多くが、利用社員1人当たり○円で、料金設定していることと、同じような発想です。

 

成果ベースでの料金設定の難しさ

成果報酬型が注目される背景

近年、アメリカなどから伝播するかたちで、コスト削減や集客拡大をテーマとした一部のコンサルティング会社では、「成果ベース」「成功報酬型」の契約形態が出始めています。背景には、

  • ・投資対効果(ROI)を明確にしたい企業ニーズ
  • ・「導入しただけ」で終わらせない、実効性重視の姿勢
  • ・デジタル化により効果測定がしやすくなった環境

などがあります。

 

人事領域での適用が難しい理由

一方、先述の効果例と矛盾するようですが、人事領域のコンサルティングでは、以下のような理由から、成果ベースでの料金設定が困難です。

 

  1. 効果に対する人事制度以外の要素が大きい
  • ・業績向上:事業戦略、マーケティング、商品力など複数要因が絡む
  • ・離職率低下:労働市場、景気、業界動向など外部環境の影響が大きい
  1. 効果発現までの時間が長い
  • ・制度設計から効果測定まで通常2~3年かかる
  • ・その間の組織変化(経営層交代、事業再編など)が大きい
  1. 運用段階での変数が多い
  • ・経営者のコミットメント継続性
  • ・管理職の評価スキル
  • ・人事部門の運用リソース
  1. 外部環境の影響を受けやすい
  • ・労働市場の変化(人手不足・人余り)
  • ・業界全体の賃金水準変動
  1. 成果の帰属が不明確
  • ・効果は「コンサル」「人事部」「経営層」「現場管理職」の共同作業の結果
  • ・誰の貢献が何%かを特定することが不可能

 

人事制度コンサルの本質的価値

調達コスト削減のように「削減額×○%」という明確な成果報酬が設定しやすい領域と異なり、人事制度は組織という複雑系に働きかける取り組みです。

 

そのため、人事制度コンサルの価値は、

  • ・短期的な数値効果ではなく
  • ・中長期的な組織基盤の構築にある

と考えるべきでしょう。

 

おわりに

人事制度への投資を検討する際、「いくらかかるか」だけでなく、「自社の規模と課題に対して、どれだけの組織的インパクトが見込めるか」という視点が重要です。

 

コンサルティング料金は、単なるコストではなく、組織の未来への投資です。料金体系の背景にある「効果ベース」の考え方を理解することで、より納得感のある意思決定ができるはずです。

 

人事制度改革は、短期的な成果を求めるものではありません。しかし、適切に設計・運用された制度は、数年後には確実に組織の競争力となって表れます。その長期的価値を見据えた投資判断が、今こそ求められているのではないでしょうか。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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