“仕事主義”人事制度の種類 ~職務主義と役割主義~

今回のブログでも、引き続き”仕事主義”人事制度について解説していきたいと思います。「仕事主義」人事制度の基本的な考え方等については、前回・前々回のブログをご参考ください。

 

一口に”仕事主義”の人事制度と言っても、実際には2つのタイプがあります。1つが「職務主義」であり、もう1つが「役割主義」です。両者の違いについては、最初は分かりづらいかもしれませんが、実際には考え方や仕組みがかなり異なりますので、これから”仕事主義”人事制度を検討される場合には、しっかりと理解しておくことが必要です。

 

1つ目の「職務主義」の人事制度というのは、一人ひとりの社員が実際に担っている仕事の内容/レベルの細かい違いを、ダイレクトに処遇に反映させる仕組みです。その特徴を大雑把に言うと、「100名の社員がいる会社の場合、100名の社員ごとに仕事のレベル(難易度や価値)を測定し、そのレベルの違いによって細かく等級ランクや賃金水準を分ける」ことになります。より具体的な例としては、同じ「部長」の職に就く社員同士であっても、例えば「製造部長」よりも「営業部長」の方が仕事の価値/レベルが高ければ、営業部長の方が等級ランクや賃金水準が高くなります。すなわち、一人ひとりの仕事の違いを”細かく”処遇に反映するのが、「職務主義」の人事制度になります。
 
欧米の人事制度についての解説で「ジョブサイズ」という言葉を耳にされたことがあるかもしれませんが、これはまさしく「仕事の大きさ(価値、レベル、難易度)」を表す言葉になります。欧米では、社員一人ひとりの仕事についてジョブサイズを測り、そのサイズによって等級ランク(ジョブグレード)や給与(職務給)を決定します。後述する役割主義の人事制度よりも、より純粋な(本質的な)意味での”仕事主義”になります。実際、日本において”仕事主義”と言う場合には、この「職務主義」を指すケースも多いです。

 

一方、もう一つの仕事主義である「役割主義」の人事制度というのは、一人ひとりの仕事の内容/レベルを細かく捉えるのではなく、仕事を”大くくり”した「役割」によって処遇を決定する仕組みです。前述した、純粋な「職務主義」の人事制度を採用している日本企業はまだまだ少ないですが、この「役割主義」を採用している日本企業はかなり増えています。特に、管理職については半数近くの企業が取り入れているといった調査データもあります。これは、今までヒト主義の人事制度にどっぷり漬かってきた日本企業が、仕事のレベルを細分化して処遇を決定する「職務主義」をすぐには採用できないので、まずは「役割主義」から採用するといったケースが多いからだと推察されます。
 
なお、この「役割主義」の人事制度を検討する場合、「役割」をどのような基準で区分すべきかという疑問があるかもしれませんが、厳密な定義は存在しません。ただ、日本企業で「役割主義」の人事制度を導入している場合、いわゆる「職位(役職)」を役割の単位として捉えているケースが多いです。すなわち、「部長レベル」「課長レベル」「係長レベル」「主任レベル」・・・といった役割区分です。この場合、先ほどの職務主義とは異なり、部門間(職種間)での違いは基本的に無くなります。同じ部長職であれば、営業部長と製造部長は(実際にはジョブサイズに違いがあっても)同じ等級ランクや賃金水準が適用されることになります。
 
 
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※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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